2011年7月12日火曜日

社会的企業「TOUCH 4 GOOD」

2010年度3月海外調査(韓国) [NO.6]


訪問先名称:社会的企業「TOUCH 4 GOOD」
訪問日時:2011.3.1



1 創業の経緯 2008年創業
代表のパーク・ミヒョンさんは大学生の時に、オルタナティブ(代案的)な社会をつくり、青年の抱える問題を解決することを目的とする、インカレのサークル「タクタス」に所属していた。当時、大統領が交代し、社会的企業法が制定され、それに合わせて、サークル主催で青年対象の社会的企業のセミナーを主催した。
パーク・ミヒョンさんがいたグループで、社会的企業のあり方を検討したところ、以下の3点のコンセプトを決定した。①環境問題を解決する。②使えるものをつくる。③利益は社会福祉へ寄附する。
韓国では横断幕はあらゆるイベントで大量に制作、廃棄されている。これらをいかに減らしていくのかをグループのテーマとした。

全国で行われる地方選挙1日で使用される横断幕の総計を試算した。1地域に5名の候補者、ひとつの横断幕の大きさが10㎡、国に3487自治体で合算すると、合計52833.3坪、サッカー場25個分となった。
横断幕の削減をテーマに取り入れたリサイクル事業は我々が初めてではなかった。ではその発想はよかったが、なぜ成功できなかったのかを分析した。
①商品がかわいくない ②種類が少ない ③品質が良くない→素材をよく活かしていない ④販路が確立されていない

以上の検討の成果を発表して、セミナーは終了した。周囲からは、素晴らしい発想だと評価を得た。大学生のセミナーだったので、それで終わるはずだった。メンバーの3人は親しい関係でもなかったが、時折、お互いに電話をして、アイデアを実行してみないかと話をした。そして連絡を取り合って2か月経ったある日、チャレンジしてみようと決断した。当時、大手企業の起業支援「才能の寄附」の公募があった。支援期間は6ヶ月。だったら6ヶ月だけやってみようと思った。それがTOUCH4GOODの始まりだった。
当初、発足メンバーにデザイナーがいなかったため、工場に依頼に行っても相手にしてもらえなかった。そのために、たったひとつの商品を作り上げるのに4ヶ月かかった。その経験は後の活動に活かした。専門知識を得るために大学の講座やトンデムン市場に通い、必要なことを学んだ。

2 企業理念
(1)UP cycling T4Gのブランド名
より良いものをつくる賢いリサイクル。価値があるものに変える

(2)企業名の由来
GOODは良い、商品のふたつの意味を持つ。リサイクルにタッチすることで、いい商品をつくれると思い、命名した。

(3)宇宙にひとつしかない商品
企業が良い活動をしているから商品を買おうということではなく、みんなから愛されるような宇宙でひとつしかない商品をつくろうという結論に達した。
多様な商品ができるから、特別なストーリーができる。


3 企業概要
リサイクルをテーマにした青年ベンチャー、社会的企業。リサイクル系の少女時代といわれている。

(1)スタッフ
10名のスタッフ(女性9名 男性1名)は全員20代。実行力とアイデアにあふれている。反面、まだ経験不足で専門性が足りない。若いので、交渉の際に相手にしてもらえないこともある。
10名では手狭なオフィスだが、みんなで集まって仕事をしている。皆で一緒に話して一体感を持つと同時に、問題を迅速に解決する環境をつくるため。
6ヶ月前に5名のスタッフを増員した。10人の社員数に対して、それに見合った収益につなげるために5~6ヶ月は必要とみていた。新メンバーは経験が少ないので、経験を積んでほかのメンバー同様に戦力になるのにはまだしばらく時間がかかると思う。

(2)ビジョン
消費者が商品を手に取った時に、「かわいいね」ではなく、「横断幕をどうしたらいいのか」と考えてもらえるようにしていきたい。理想は、無駄な横断幕がなくなって、自分たちの会社の存在理由がなくなるようになることである。

4 3つの事業部の活動
(1)ファッション事業部
①概要
NPOや学校から横断幕を寄贈を受け、収集して洗濯する。スタッフでデザインをつくり、製品は自活センターに発注する。収益の5%をアトピーの子どもたちに寄付している。
②販路
  • オンラインショップ
  • オフライン販売 ショップに納品するか、ショップのスペースの一部を借りて販売している
  • 香港や日本の環境ビジネスイベントに出店。北九州の環境博物館には年2回訪問している。
③T4G遊び 市民との協働ワークショップ
ホームページで毎月5名募集。屋上に大きな広告板を置いて参加者全員で何ができるか考え、アイテムを作成した。毎月、扱う素材が変わる。先月はプラスチック製の花札でイヤリングを作った。

(2)クリン ソルション部
  • 行政やマスコミの環境キャンペーンに参加し、成功するためのアイデアを提案し、T4GをPRする。
  • NBC環境ドキュメンタリー「北極の涙」、「アフリカの涙」はT4Gが唯一、ライセンス契約を結んでいる


(3)都市型環境事業部
  • 韓国では人口の大半が都市部に集中している。都市部への一極集中から起こる環境問題についての教育活動を実施。
  • リサイクルでの教育
横断幕を利用した自分だけのオリジナルグッズの作成(筆箱など)
環境関連クイズおよびチーム活動

5 マネジメント
(1)インキュベーションセンターからの支援
T4Gはインキュベーションセンターで社会的企業としてサポートを受けていた。一番良かったことは、社会的企業として経験不足な点を補ってくれる相談相手(メンター)がいたこと。

(2)社会的企業の条件と資金援助
国や自治体からは人件費や宣伝費の支援を受けている。ソウル型社会的企業に認定されているので、事業基準はソウル市が出している指定表に基づいていて、国の労働部が指定する社会的企業の8つの基準は満たしていない。ソウル市からの資金援助としては1年間人件費が支給される。基準は国が指定する最低賃金と同じ。

(3)給与
政府が指定する最低賃金で支給している。代表はそれより安い。起業当初に比べると少しずつ給与は増えてきているが、豊かな生活はできない。

(4)収入と支出
毎月800万ウォンの売上。純利益は残らない。ソウル市の支援は4月で打ち切りなので今年は転換期になると思っている。家賃は毎月50万ウォン、再開発地域なので家賃が安い。ソウル市内でこの広さでこの値段は安い。机は全て拾ったもの。パソコンはリサイクル企業から買ったもの。

(6)自活センターとの関係
自活センターが先駆けて横断幕を使ったリサイクル商品をつくっていたが品質が悪くて売れなかった。今は自活センターの製品作成の能力と、T4Gの企画デザイン力を活かして、お互いにWINWINの関係が築けている。全国の自活センターや主婦の工房から問い合わせの電話がくる。


6 商品解説
  • 商品の価格は800~69000ウォン。
  • オフィスでの購入も可能。倉庫は別にある。
  • 素材として主に横断幕と広告板を利用
  • エコカバンのニーズが増えるとは考えていない。品質のいいカバンでかつエコ的な意味があるのはいいと思う。プラスアルファの価値をもつ品質のいいカバンをまず考えてつくっている。
  • 横断幕をなくすために、カバンという素材を選択した。カバンをつくるために選んだわけではない。それぞれの素材に応じて、商品のラインアップも変わってくる。例えば地図をリサイクルしてノートやパスポートカバーをつくった。
  • 銀行がつくった横断幕を使用してカバンを作成し、銀行の優秀社員に与える賞品にした
(1)「アフリカの涙」カバン
横断幕をリサイクルしてつくったもの、あまったヒモでつくった
NBC「アフリカの涙」環境ドキュメンタリー ライセンス契約している

(2)リバーシブルのカバン
地下鉄の広告横断幕、自転車のチューブやタイヤをリサイクル

(3)カード用財布
内部は服をリサイクル

(4)マウス入れ・ネットブック入れ
地下鉄の看板のリサイクル

(5)ペットボトルのタンブラー入れ

(6)捨てられたキーボードのキーフォルダー

(7)カバン 4年Who?
4年後、4年誰という意味 ワールドカップの横断幕を利用