2015年3月26日木曜日

Köln

2013年度海外調査(ドイツ) [NO.4]  


Workshop 指導者セミナー 
テーマ:困難を抱える青少年支援~Transition
日本視察の報告 報告者 Ms.Dr.Petra LIPPEGAUS-GRÜNAU 
訪問メンバー宮本、津富、西村、佐藤、白水、大串(コーディネーター)、本間(通訳)
訪問日時:2013年11月19日
場所:Köln
 



【 報告要旨 】
職業に対する考え方の違いに驚いた。日本では企業共同体が尊重されており、ドイツにおける“Beruf(天職)”という概念がなかった。進路選択において大学(学校)の及ぼす影響が大きく教師がSWの役割も果たし、名門大学を卒業して大企業に入り終身雇用の労働生活に就くことが目指されている。塾などに通う受験競争が過熱していて日本の子どもは親や同年齢の子どもたちとの接触が少ないが、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)では日本は3位でドイツより高順位である。職業訓練は企業内職業訓練(OJT)が中心で国は責任を負わず、規格化されていない。企業研修においては会社の一員になることが重視され、特にコミュニケーション能力などの社会性が強く求められる。現代では大企業正社員に慣れる人は減少している。学校からごとへの移行のつまずきは3つの形態として若者を不安定にしている。一つは「フリーター」であり二つは「ニート」であり、そして「ひきこもり」の問題である。深いひきこもり理解に感銘を受けた。義務教育に参加しない場合警察が介入することを聞いて驚いていた。学校でのキャリア教育やサポステを視察した。支援の現場には社会教育士(Sozialpaedagoge)のような専門家が配されているとは言えないが寄り添い型支援が長期に亘って愛情を持って柔軟な教育的個別支援が行われている。また相違点として、ジェンダー格差解消(Gendermainstreaming)や民族格差解消(Culturalmainstreaming)というテーマが重要視されていなかった。一方で両国の共通点として、雇用形態の不安定、柔軟化、多様化と若者の失業問題であり、学校から仕事への移行における教育的支援が必要だということである。






以下近日公開

Youth Press (jugendoresse)

2013年度海外調査(ドイツ) [NO.3]  


訪問日時:2013年11月13日
場所:Youth Press (jugendoresse)
 



【 概要 】
ユースプレス(ドイツ)は、国内の若者プレス団体を束ねる全国団体である。すべての州において、若者のメディア制作者はプレス団体を形成している。メディアをつくるという楽しみを共有している作家、写真家、ウエブデザイナー、ラジオプロデューサー、映像作家らが、この機関から恩恵を受けている。オフィスを、Democracy & Dialogue (Demokratie & Dialogue.e.V.)と共有している。

【 先方担当者について 】
Jonas Tylewski氏は20代前半。大学で法律を学んでおり、アルバイトとしてサッカーの審判をしている。Youth Pressでは、ボランティアで週20~40時間活動する(交通費が少し支給される)。パートナー活動(渉外)の担当者で、スポンサー担当や国際担当をしている。大学では法律学を学んでいて、将来は法律家または外交官になりたいと思っている。ギムナジウム時代に勉強以外に何かやりたいと友人と話して、学校新聞を作り、ベストな新聞に選ばれ、州支部で活動をした。大学に進み、プロジェクトマネジメントやロビー活動、人事関係に関心を持ったので、ユースプレスの本部に加わった。

Jonas Tylewskiさん 写真中


【 組織 】
ユースプレス・ドイツは、ジャーナリズムに関わる若者の利益を反映する団体であり、ロビー活動を行っている。経済界、行政、出版業界に対して、若いメディア関係の人々の権利を主張する。10年前にでき、全国プロジェクトを担当している(戦後から似たような全国組織ができたが政治的に2つに分かれていた。それが統合されたのが10年前)。国際的な仕事とワークショップをやっている。
EUには、EUのユースプレスのネットワークがある。これはドイツから始まりEUへと広がったものである。
各州には支部があり、セミナーやワークショップをやっている。あらゆる若者メディアが加盟できる。たとえば生徒新聞、学校新聞など。個人でも加入できる。Youtubeで活動している人でもブロガーでもよい。プロ(個人)も構わない。年齢は12~27歳までである。小学校の学校新聞のコンテストもやっている。また、プレス(ジャーナリスト)としての身分証明書を発行している(自動車免許証のようなカード)。



【 活動 】
  1.  セミナー: プログラムでジャーナリストのスキル(書く、調査する)を学ぶ。練習のための新聞も発行している。
  2. 新聞制作: 毎号WEBで、制作者を募集して、新聞をつくる。特集として、たとえば子どもの権利などを取り上げる。各号にアドバイザーがいる。
  3. メディア見本市: 700~1000人が参加する。プレスに興味のある若者がメディアをもっと知る機会となることが目的。ワークショップでは、TVの司会や新聞つくりをやる。
  4. 学校新聞コンテスト 連邦大統領まで巻き込む大きなコンテスト。優勝した人がさらに学べる会議がある。2人が学校へ行って、メディアとは何かを教える。
  5. 不定期に発行する新聞(Aut-gemacht!): 過疎化した地域ではメディアが必要であり市民新聞を作る。
  6. EUユースプレス: 他国のユースプレスとのネットワーク。ロシアのメディアとのネットワーク
  7. 身分証明書の発行
  8. 権利の相談
  9. ロビイング: 議員ともよい関係にあり、若者の利益についてどう思うか聞かれている。取材情報源に関して保護するという法改正をさせる活動をしている。

The Archive of Youth Culture(Archiv der Jugendkulturen e.V.)

2013年度海外調査(ドイツ) [NO.2]  


訪問日時:2013年11月13日
場所:The Archive of Youth Culture(Archiv der Jugendkulturen e.V.)
 



【 概要 】
15年前に、代表のGabi Rohmannさん(40歳くらいの女性)が、若者の文化を包括的に調査することが必要と考えて設立した公益団体。まず始めたのは、青少年文化のアーカイブ(資料室)。現在、8000冊の書籍、600の学術論文、3万冊の雑誌を収録している。その他、DVD,CD、パンフレットも収録している(残念ながら規模を縮小しなければならないため、資料を段ボール箱に詰めなければならなくなっている)。
自費で維持しており、スタッフはすべてボランティア。プロジェクトがとれればそこからお金(人件費)を得る。プロジェクトには、1か月、3か月、3年とさまざまな期間がある。



事務所のビルの外壁 グラフィティが描かれている


【 プロジェクト 】
ユースカルチャーにおける差別についての資料を収集していたが、その過程でいろいろな若者に出会って、直接実践してもらった方が魅力的でよいと考えるようになった。具体的には2001年に、ネオ・ナチ、極右などが台頭したため、シュレーダー首相が何かしなければならないと呼びかけたのに応え、学校やユースセンターにおけるワークショップを始めた。社会的に不利な立場にある若者が対象。グラフィティ、パンク、テクノ、メタル、ヒップホップ、ラップ、まんがなど、若者の関心がある文化を活用して、それらを通じて差別を扱う。重要なのは、パンクをやる場合には、パンクの専門家が指導者を務めること。指導者を若者が認めるためには、その畑の本物でなければならない。年齢的に若者に近いことも重要である。ドイツでは様々な差別があり、極右、反ユダヤ主義、性差別、ホモフォビア(同性愛者差別)などが重点テーマである。ユースカルチャーにおいて、差別は良い面でも悪い面でもテーマになる。差別的メディアがあり差別を助長する一方で、差別に反対し解決しようというメディアもある。ワークショップは柔軟で、子どもから大人まで受けることができ、1時間から1週間まで実施できる。

【 プロジェクト① カルチャー・オン・ザ・ロード 】
・力を入れているワークショップは、カルチャー・オン・ザ・ロード(旅回りの文化)である。各国のドイツ語圏を巡回して開催する。専門家の指導員が60名いる。専門家は、テクノ、ヒップホップ、ラップなどができるだけでなく、インターカルチャーで多様な背景を持つ人たちである。参加者は、ワークショップでやった成果を、ビデオ、雑誌、ダンスのプレゼンなどで発表する機会をもつ。差別という政治的なものについて学ぶだけでなく、映像やスケートボードなど職業につながるスキルを身につけることもできる。ドイツではそれをインフォーマルな学びと言う。いろんな人との接触をもち、協力し、いろんな(職業)能力を身につけるという意味である。
例) 反ユダヤ主義、反差別主義のワークショップ: ベルリンの学校に提案して実現した、3年限りのプロジェクト。2日間の(授業としての)ワークショップと1週間のプロジェクト・ウイークで構成する。日本の総合学習のようなもの。7つのワークショップ(演劇、ラップ、コミック、写真、ハウスDJ,ビデオ、グラフィティ)がある。参加するワークショップは参加者に自由に選んでほしいと考えている。各ワークショップに2人一組の指導者(イスラエル系移民と、移民を背景とする専門家)がいる。資金は連邦家庭省、ドイツ政治教育のためのセンター、ベルリン州移民対策部から。カリキュラムではないので、継続するためには新たな資金を得る必要がある。
マックスプラン・ギムナジウム(ギムナジウムだが敷居が低く、移民など不利な人々が住んでいる地区の学校。進学コースだが上級学校では決してない。卒業すればアビチュア(大学入学資格証明)を受けられるのだが中退者が多い)では午前8時から午後2時半まで毎日行った。移民の背景をもつ、16~17歳の80名の生徒(不利な条件をもつ若者)が参加。その様子について、生徒が短いビデオを作成した。タイトルは「偏見のない果実」で差別を超えることをテーマにしている。



【 プロジェクト② 文学と写真のためのワークショップ 】
ベルリンの学校の12人の青少年が参加。参加した生徒の住むノイケルン地区は全国のなかでも殺人などの犯罪が多いというイメージがあり、子どもたちはその偏見に傷ついている。1週間にわたって、文学者と写真家が専門家として、アイデンティティについてワークショップをした。参加する生徒は多言語で、ユーゴ、アラブ、ロシアからの移民である。私や家族、自分の余暇、学校について文章を書き、家族の写真を撮る。1週間のプロジェクト・ウイークのあと学校で成果を発表する。生徒は、当初は、授業を受けなくていいと理由で参加したが、終わってみると、クリエイティブで楽しかったとのこと。19世紀の古いカメラを使って写真を撮ることもした(写真の歴史を学ぶこともした)。現在は、もっとたくさんの人に見てもらおうと、学外の10か所の公的機関を(赤十字、都市計画課の中、州の議場などお金を出してくれるところ)を会場にしてギャラリーで展示している。ノイケルンだって普通だということを、展覧会をすることでわかってもらう。借金をして行っているプロジェクトなので、資金を回収するため、お金をもらえるところに展示している。



ワークショップの作品


【 プロジェクトについてのQ&A 】
Q 参加者をどうやって集めるのか
A 学校プロジェクトは授業のひとつなので参加が義務。ユースセンターなどでちらしを配って集めるプロジェクトもある。学校については、ドイツの学校制度はまちまちなので、いろいろな時間帯で行われている。ワークショップは柔軟性に富んでいて時間、対象、手法、目的はいろいろある。


Q 参加した若者への影響は?
A ワークショップは短期的なものなので影響をはかることはできない。うれしい例として、2007年にスケートボードワークショップに参加した若者から手紙をもらった。かれは、それがきっかけでスケートボードに興味をもち、近所にスケートボード場を作る運動をして獲得した。また、社会教育を学びたいので、進学してここで実習をしたいという手紙もあった。チームリーダーからは、自分たちが興味をもっていることをしてくれた、創造的なことをやってくれて楽しかったという感想がある。


Q あなたがなぜ、これを始めたのか。背景は?
A 社会学とジャーナリズムを学んだ。ほかのスタッフは、商業関係、文化などいろいろである。


Q 参加する青少年はいろいろな問題をもっているが、それへの取り組みはしているのか。
A 社会教育福祉士がやるようなことはしないが、何か耳にした時は助言したり先生と相談したりする。    


Q 学校でのワークショップの場合、学校との交渉は?
A 学校から問い合わせがある場合の方が多い。こちらから提案することもある。


Q 不利な若者に焦点を当てるのはなぜか?
A 不利な人たちが認められることが大事。注意を向けられていない、誤解されているという感覚をもっているから。チャンスも少ない。


Q 同じ環境の人をリーダーにすると盛り上がってしまい、その集団から外に出られないということはないか? 
A そうならないために、チームリーダーの研修をしている。研修は実際的である。。





【 資料室 】

資料室
  
数名のスタッフが働き、外部からも人が出入りしていた。若者は、ユースカルチャーに関心が高く、大学生や院生などが論文を書くためにここを利用している。それほど広い部屋ではないが、自然木で作った書棚に種類別の雑誌や書籍がきちんと整理されていた。過去にここを利用して書かれた学生の卒論も収録されていた。



Democracy & Dialogue (Demokratie & Dialogue.e.V.)

2013年度海外調査(ドイツ) [NO.1]  


訪問日時:2013年11月13日
場所:Democracy & Dialogue (Demokratie & Dialogue.e.V.)
 



【 概要 】
ユースワークとユースメディアの融合を目指す大きなプロジェクト。2008年に代表Andreas Karsten(ドイツ人)が、ブダペストに欧州議会が運営するユースセンター(もとはストラスブールにあったが、その後、ブタペストにもできた)で出会った仲間と始めた。同様のアイディアは、EU議会でも取り上げられていたが、なかなか始まらないので、自分たちで始めた。Andreasは研究者でありユースクラブで働いたこともある。メンバーは青少年研究者、政治家、ユースワーカーなど20人。そのうち6-8人が中心(パートタイマーやインターンを含む)。このほか、世界中に、フリーランサーなどのネットワークがある。ドイツ人は一人だけ。イスラエル人もチュニジア人までいる。活動の中心はベルリン。
主たる活動は、Youthpolicy.orgという若者政策に関するグローバルなエビデンスのデータベースを作っている。ユニークでオープンでアクセス可能なものをつくる。政策過程のすべてのサイクル(分析から政策形成、実施と評価)にわたって、知識と情報を作りまとめる。若者政策だけでなく、若者に影響がある政策全般の公共政策が、若者の権利に対してどのような影響を及ぼしているかを知るために、独自の監査もしている。国際的な若者分野の状況を調べ、文書に残すとともに、若者政策によって形成される現実を見つめようとしている。



代表のAndreas Karstenは写真左


【 財源 】
・活動資金の50%は、ジョージ・ソロスのOpen Society Foundationから、残りの50%はブッシュ財団、シェル、連邦省などから。各国においてパートナーも探す。来年はスイスで集会を開くが、その資金は政府が100%を出してくれる(これは例外)。

【 活動1 各国の若者公共政策のレビュー 】
・2012年にまず3冊を刊行した。①Youth and Public Policy in Estonia ②Youth and Public Policy in Kyrgystan ③Youth and Public Policy in Serbia。現在進行中は8か国。ネパール、モンゴル、チュニジア、コロンビア、チェコ、ハンガリーなど。Open Society Foundationが若者政策に取り組みたいと考えていたので、このアイディアを提案し採用されて始まった。レビュー対象国は、OSFのオフィスがある国。
・各国に4~5人程度のチームがある(300人のリサーチャーのネットワークはあるが、足りないので、各国で大学などを通じて募集して選抜する。決めるのに7~8か月かかる)。彼らを、その国や地域に詳しい、スーパーバイザーが指導している。国際的な編集委員会があり、事務局はベルリンにある。
・プロジェクトを始めるに当たっては、7か国から65人がベルリンに集まり、方法論を説明した。共通テーマは、社会的経済的不利、マイノリティ、環境。さらに、各国ごとに重点テーマを決めてリサーチする。たとえばコロンビアでは、コンフリクト、健康、教育。スワジランドでは、参加、健康、ユースワーカーの役割。1年間リサーチしてまとめて文書とするが、それを発信することが重要。文書を出すことにより、政府が若者支援を見直すきっかけとなる。たとえばエストニアの場合、18%がマイノリティだが、応分に尊重されていなかった。私たちの活動の結果、若者政策において、人口に比例してお金を出すことになった。



【 活動2 若者政策に関する各国のファクトシートの作成 】
 若者政策に関するグローバルなエビデンスのデータベースをつくっている。ITを用いて、情報源として使えるオンラインスペースを提供する。投票年齢、成人年齢、婚姻年齢、刑事責任年齢、喫煙率などが調べられる。現在、Algeria、Angola、Australia、Barbados、Bolivia、Bulgaria、Canada、Estonia、Honduras、Japan、Kiribati、Kyrgyzstan、Liberia、Malaysia、Nepal、Saudi Arabia、South Africa、Ugandaの18か国。担当のジョンはイギリス人。ユースワーカーで、大学院で学んだこともある。


スタッフのジョン



【 活動3 ウエブ上に若者政策に関するオンライン・ライブラリーを立ち上げる 】
世界中の組織の、オンラインで読める論文や文書を集めている。これを使ってさまざまな事項についてリサーチできる。リサーチしたければ誰でもアクセスできる。ひとつのサイトに集めることで、各国がどのようなことに関心をもっているかがわかる。内容は包括的で、雇用、教育、健康、保健医療など、多岐にわたる分野から構成されている。学術論文はフリーにアクセスできないのが問題である。いずれ集めて公開したい。また、言語は英語だけという限界がある。




2012年12月18日火曜日

社会的企業 イウム



NO.

訪問先名称
社会的企業 イウム
訪問日時
20121022日(日)~23日(月)
場所

先方担当者

先方連絡先

訪問者
宮本、山本、佐藤、津富、新谷、白水、岩本、畑山、白谷


入手資料等

参考URL等

その他参考資料等

1)社会的企業 「イウム」は
文化を通じた地域社会の統合という目的で活動している。
文化というプリズムを通して、私たちの日常生活への関心を新たにして、地域開発のための支配的方法と投資の問題をイシュー化し、新たな地域開発モデルを代案的に提示している。地域の現場活動の具体性が創造性のモチベーションだと信じており、プロバイダの一方的決定によって都市基盤が解釈され、管理されるのが問題だと思って、文化を通じた新たな解釈の可能性を探求している。
2)社会的企業 「イウム」の活動内容
-青年商人プロジェクト:青年モールレアルニュータウン*
-井邑まちの市場活性化プロジェクト
-低迷した旧都心の伝統文化資源を有効に活用し、活力を引き出した韓屋生活体験館の運営
-全州韓屋村の村づくり事業
-在来市場を芸術活動、教育、青年起業家精神と若い感受性が結合する市場に新たに作っていく空の庭プロジェクト
-農村の多様な価値を知らせるためのリサーチ事業
-都市農村交流事業文化拠点づくりなどの地域再生事業
-青春作業所: 低所得層おばあさんたちと青年デザイナーが一緒につくる工房プロジェクト
*青年モールレアルニュータウン
 これは門前盛市(文化を通じた伝統市場の活性化モデル事業) プロジェクトを有効に活用して全州の南部市場で始まった事業。
この門前盛市プロジェクトは商業的に低迷している伝統市場に文化の息吹を吹き込んで、伝統的な市場を地域文化空間であり、日常の観光地として有効にするために、文化体育観光部から2008年から推進しててきた政策事業である。
青年モールレアルニュータウンは門前盛市アカデミーを修了した青年商人たちが直接お店を開いて運営している。全州南部市場だけの伝統的な市場と青年とは余り似合わないと思いますが、非常によく一体となっている独特の雰囲気を感じられる場所で、伝統市場で会う異色の青年店舗15個が全州南部市場の新たな観光スポットとして注目されている。カフェ、ボードゲームルーム、漢方茶屋、カクテルバー、ハンドメイド小物の店、ファッション雑貨店、食虫植物専門店などが運営されており、様々な体験プログラムと一緒に毎週土曜日の夜、ナイトマーケット、公演、ワークショップなどが開かれる。


22日(日)夕方~
社会的企業イウムが支援する南部市場内にある若者モールリアルタウンにて、若者が運営するカフェに集まり、若者達の事業のプレゼンテーションと日本の支援団体の紹介を行った。
*イウム代表 オンソンボックさんからの説明
韓屋村には現在い400万人の観光客が くる町になっているが、2001年に保存地区として合意形成できるまでは、建て替えられ、マンションになる予定だった。
現在は有名になって観光地、商業地化されてしまったが、南部市場を個性的な場にすることで単なる商業地ということになるのを防ぎたいと思っている。
南部市場は80年代にはとても賑わっていた市場。90年代にはさびれてしまい、朝市程度しか使われていなかった。また、98パーセント以上が50代という状態で高齢化が進んでいた。
この場所に多様な主体が関わることで、社会的な生態系づくりをしている。
使われていない場所や時間帯を若者たちの活躍の場にした。
夜の時間をつかって若者たち主催のイベントや出店など。
ゴミ置き場状態になっていた2Fをつかい、若者たちが出店。
育成事業として、起業したい若者をサポートし、様々なものをワークショップ形式で参加。
現在は土日については200パーセント以上の売り上げをあげている。
韓村と市場は分断していたが、現在は連動している。
モールリアルタウン内のカフェにて交流会


*市場でカフェを開業した チョンヨンワさん
昨年5月にこの青年モールの話をきき、プロジェクトに応募。
以前は観光広告の仕事をしていた。全州在住。
これまでも40代ぐらいのになったらお店を出したいとおもってきたが、こんなに気軽に店を出せると知って、やってみようと思った。
大学院では起業について学んだ。ここで学んだ事として、自分がうまいことできることをする。自分が好きなことをする。社会的に意義のあることをする。
という原則のなか、じぶんでは好きな音楽などを通じて何かしたいとおもった。
最初は大変だったが、だんだんと市場全体に人が増えてきているのできたいしている。
自分は(適当に稼いで幸せになる)が理想なので、そのようにしていきたい。

他、2名の若者起業家のプレゼン
日本からはK2インターナショナルの事業について岩本がプレゼンをした。 

参加している若者達の紹介
モール内を見学

モール内のレストランで食事


23日(月)10時~
22日夜はイウムが市から運営委託を受けている韓屋に宿泊。
昔ながらの韓屋をカジュアルな宿として改装し、旅行者が気軽に泊まり、韓国文化を体験できるところになっている。値段もリーズナブルで韓国の昔ながらの住まいを体験する事ができる。
オンドル(床暖房)についても、現在は温水やガス、電気などだそうだが、ここでは薪を使って火を起こしていた。

■イウムについての基本的な紹介
28名(職員)。2年前までは48名働いていた。今は3つの会社に分かれている。
     体験館の運営 全州市から委託を受けて運営している。この体験館は文化的なことの構築とゲストハウス。体験館の課題は文化を基盤とした団体のネットワークをつくる。
     南部市場での事業。ジツコリア(ジツ=家)。ハンドブックをつくろうとしている。
     チョムという地域の事業 農村のコンサルティング。都市の再生。農村の活性化をイウムはしている。
独立採算なので収益も独立している。
韓屋を改装した体験館に宿泊


青年実務者へのインタビュー 4名の実務者と代表、副代表が同席
■イウムに来る以前はどのような仕事をしていたか?
Aさん:全州出身でソウルで大学を出た。非営利活動に興味があり、ソウルでもボランティア活動に参加、アメリカでも韓国の市民団体のインターンとして活動した。農村に興味を持っていたところ、イウムが農村のコンサルティングをしていると聞き、イウムへきた。
Bさん現在は大学院に在籍中。全北大学でパソコン工学を勉強している。どんな企業に勤めるかで悩んでいるところだが、大手企業で務める事が幸せなのか悩んでいた。自分の地域で何かできないか?社会的企業に興味を持つなどがあり、イウムと出会った。現在は全州のとなりのチョムの商店街活性化事業に取り組んでいる。
Cさん 2008年にピースボートに乗った事から社会的企業に興味を持ち、共に働く財団でインターンとして働いた。その後、アルバイトをしながらNPO論を学んだ。しかし、現場に出たいという想いがあり2年前にイウムにきて仕事を始めた。出身はソウル。
Dさん プサン出身。大学はソウル。サークルで田舎とのつながりがあったが、卒業後に何をするか考えていた時に、田舎にきたら土地をあげると言われ、そのような生き方もある、田舎暮らしについて考えていた。いきなり田舎暮らしは難しいと思いここでの事業に関わりながら将来について考えている途中。
■収入について
Dさん 120万KW(約9万円)若者実務者は基本的に同じ給与
一般的な給与水準に比べると低いほうだが、やりたい事をやれている事などで納得がある。
適度(適当?)に稼いで幸せに・・・をモットーにしている。120万KWは小さな金額だが、生活するには十分だと思っている。
共同生活なども考えているが、現実的には難しい為、意識的な面での共同を目標にしている。
Bさん サムソンで初任給は約300万KWぐらいだと思う。
Cさん 確かにここで住むには十分だが、迷っている。学べる事が多いと思ってここにいるが、少し忙しすぎる。将来を考えると迷う。
Bさん 将来結婚をしたり・・と考えるとやはり不安。しかし、今はみんなといるので大丈夫。

■労働時間について
忙しい、なかなか時間には終われない。様々なイベント等もある為。
チョムのチームは遠いので、出来るだけ時間は長くならないようにしている。
それぞれプロジェクトの運営と事務作業があり、他に南部市場の場合は市場の人たちなどとの調整やミーティングが夜に入る為、遅くなってしまう。

■大学進学率80パーセントの意味について
代表:昔から学歴差別があり、大学を出ると身分が上がるという考えがあり、親たちが勧めているが、子どもの意図とは違うときがあると思う。
■新たなスタートをする若者が多い気がするが、社会的企業法が後押ししていると思うか?
代表:日本に比べてどうかはわからないが、子ども世代が親の考える学歴や仕事で幸せになるかに疑問を持ちやめている若者も多い。お金ではない余裕のある生活を望んでいる若者は増えていると思う。
社会的企業法そのものではなく、格差を埋めるための仕事や生き方意味があるのではないか?
■受け皿としてのイウムがなくてもこのような仕事をしていたと思いますか?
A:農村で3か月住んだが限界だった、しかし一般企業で働くよりはよかったし、このような支援がなくてもやっていたと思う。
Bもともと代案学校の出身で、子どものころから代案の人生を歩んできた。何とかやっていると思う。
体験館のリビングにてインタビュー

全州の街並み





      宮本先生より イウムの活動をヒアリングしての感想・コメント
全体的な感想ですが、日本に比べて若い人が元気。日本ではNPOが多いがそこで活動しようとしている若者も多いですが、雰囲気が韓国の方が前向きに感じる。どうしてなのか分からないが、一つの感想は、日本の場合はサラリーマン社会になったのが長いので、サラリーマンではなくて商売をしている親が少なくなってきているので、サラリーマンでない仕事をするのが不安。韓国ではまだサラリーマンも少ないのでその分、サラリーマンでない仕事をするにしても不安でないことが多いのかと感じた。もうひとつは親世代が労働運動社会運動している人がかなりいるっていうのは日本ではない。社会的な意識をうまく子どもたちに伝わらなかった。韓国の若者はその社会的意識がつたわっている。むしろこういう動きは韓国が引っ張っていくのではないかと思う。

富川(プチョン)文化財団、부천문화재단



NO.

訪問先名称
富川(プチョン)文化財団、부천문화재단
訪問日時
20121023日 10001520
場所
富川文化財団
(地下鉄1号線松内(ソンエ)駅 徒歩10分)
先方担当者
氏名 キム・ヘジュン(代表理事)
   その他、文化財団職員5
先方連絡先
所在地:
경기도 부천시 원미구 1 394-2 복사골 문화센터 4
京畿道富川市遠美13942 ボクサコル文化センタ4
電話番号:032-320-6300
メールアドレス:twtkr@bcfdagam
訪問者
宮本みち子、佐藤洋作、津富宏、白水崇真子、山本耕平、白谷素子、畑山麗衣、新谷周平(記録)、カン・ネヨン(通訳)

■入手資料等 財団紹介の小冊子
Bucheon Cultural Foundation News Letter, October 2012, vol.96
              Bucheon Cultural Foundation Annual Report 2011
■参考URL等 http://www.bcf.or.kr/
               http://blog.naver.com/mybcf
               www.facebook.com/mybcf
■その他参考資料等

【富川市の位置と財団の役割】
 富川(プチョン)市は、ソウル市と仁川(インチョン)市に挟まれたソウルのベッドタウンで、人口約90万人の都市である(ソウル市の人口は約1000万人)。富川文化財団がある松内(ソンエ)駅は、ソウル駅から地下鉄1号線で17駅目にある(日本で言えば、千葉県の市川市や船橋市にあたるだろうか)。
 富川文化財団は、市民の文化活動の交流を促進するための財団である。とくに富川市はベッドタウンであり企業都市ではないために、日本の横浜市や金沢市の文化政策も参考にしながら、文化の面に力を入れ、予算を投入しているという。国際的に知名度の高い祭もあるが、地域に居住している市民にとっては、必ずしもなじみ深いものにはなっていない。それゆえ、コミュニティをベースとした文化活動を盛んにするために、「文化分かち合いコーディネーター」を養成し、コミュニティセンター、学校、福祉館や図書館など、地域に送る必要があるという。あるいは、富川で育ったわけではない団体を富川に誘致したりもする。
 とくに、若者、女性、シニア(退職者、韓国では日本より定年が早い傾向にある)が地域に貢献できる道をつくることが財団の役割である。個人が講師をつとめたり、小さいチームを作ってプログラムを運営したり、あるいは、コミュニティビジネス、社会的企業等の組織の形で、市民とともにデザインをしていくのが財団の役目である。
 職員は、ここで80人、他の場を含めると170人いる。

【現在と今後の展望】
 地域で活動する若者を支援する基金(社会革新基金)をつくろうと考えているという。そして、ソーシャルベンチャーパートナーシップのネットワークに基金を運用する権限を与える。行政からの補助金と企業からの社会貢献によって基金を作って、民間で運用するような方向で今動いている。
 たとえば、国からの委託で財団が1年間若者のインキュベーティング事業を行うが、富川市では、14の若者の社会的企業を発掘した(全国では300)。発掘された社会的企業の約10%が現代自動車基金から援助を受けている。すでに社会的企業になっているモンタンのようなところは、社会革新基金や自治体の事業費を活用する方法もある。
2007年からの社会的企業育成法、今年からの協同組合法によって徐々にいい方向になっていると評価する。次の大統領選挙(12月)に際して、若者にどう希望をつくるかを考えており、夢を見る機会を提供し、それが社会問題を解決するエネルギーとなること、階層、世代に関係なく幸せになる文化を享受する権利を構築すること、すなわち、経済発展から文化の発展へと比重が移動していくこと、それが若者に大きな機会となると考えている。

【施設・設備】
 同じ建物内には、シアター、映像機材の貸出、健康家庭支援センター、女性センター、多文化家族支援センター、芸術図書館、若者カウンセリングセンター、退職者支援センター(シニア・ハッピー・デザイン・センター)、インキュベーションセンターなどが入っている。

【感想・考察】
 日本と同じように行政直営から民間委託への流れがあるようだが、財団やその代表理事の立場にもよるだろうが、決してその流れを悲観しているようには見えなかった。やむなく民間委託をするというよりは、積極的に若い世代の組織づくりを支援し、そこに委ねていこうとする姿勢を感じた。もちろんそれがどの程度の量と質を可能にするかによっては、国家にも社会にも期待されない日本の新自由主義と似たような状況を帰結するだろうが、いまだ自営業者的感覚や、労働運動の記憶が残るなかで、人々や若者が意思をもって柔軟に、ニーズに応じた新しい組織やサービスを作りあげていくことが可能であれば、日本とはまた違った大きな社会と、それに対する国家・行政との関係が築かれるかもしれない。