2012年6月6日水曜日

水原市社会的企業豆腐製造業「チャル愛」(豆腐と豆の製造工場)

2010年度3月海外調査(韓国) [NO.5]


訪問先名称:水原市社会的企業豆腐製造業「チャル愛」(豆腐と豆の製造工場)
訪問日時:2011.2.28



【概要】
市役所職員2名に案内されて、豆腐製造工場を見せてもらい、2階の事務室で話を聞く。

2002年に自活センターで豆腐製造で働いていた。ここは、生活保護受給者の自立のための職場で、18-64歳が対象。公共サービス型と市場型(2-3年で独立すること。給料は国から出る。資金は、国50、広域自治体25、基礎自治体25)がある。

2005年 3年間かかって準備して、水原市から自活共同体として認定を受ける。2名以上が働いていることが条件。豆腐製造事業を始めた。8㎡の小さい空間。その時は参加者として働く。生協から認定してもらう。オーガニック豆腐を作る。もともとは事業に失敗してアル中になり、ホームレスのシェルターにいた。しかし自立しなければと決心して酒をやめ、持続性のある仕事に向かった。

2008年 社会的企業の認証を受ける。生協に納品。学校給食や会員向け販売も始める。
店を借りるのに市、県が補助金を出してくれた。脆弱階層を雇用する。4人を雇用。
受給者からの自立が大事。自分は苦労したので次の人を助けようと思って活動している。
成果:2人は受給者から採用。1人はシェルターにいたが自立した。ここを通して4人が他に就職。社会的企業は、一人でがんばっても成功できない。融合しないとできない。民間共同でないと難しい。自治体との関係が大事―設備の提供、市がもっている建物の提供や安い賃貸。優先購入、資金がないので外部の支持なしにはやれない。しかし競争なしにはやれない。

脆弱層の自立のためには、社会の一員として生きる希望をもてることが大事。キムさんの人生の話を聞かせる。普通の人は隠そうとする。耐えられない人は自活センターで勤労を続けるしかないだろう。リーダー自ら見本を見せること。ロールモデルを作ること。自活センターで手当てをもらうためにしかたなく働く人が多い。自分は時間外まで働いた。それを回りに見せた。
現在、キムさんには講演依頼がたくさん来る。TVや取材も来る。そのような折には、「今のようなみじめな生活をするのか?」と聴衆に問いかける。脆弱な個々人のケースワークでは効果が上がらない。社会性をつけることをやらないと、働けといっただけではだめ、共同体(コミュニティ)が大事。

◆ キムドンナム氏は、努力して這い上がり、成功を勝ち取った自信にあふれている。社会的企業のなかでも代表的な成功事例のようで、多数の講演やTV取材を受けて、恵まれない人々に対して自分の経験を語り、がんばれば自分のようにどん底から這い上がることができると説いて、脆弱層の支援に身を投じている。行政とも親しい関係にあり、水原市における社会的企業の展開の先頭に立っている。2011年には東京、名古屋に招待されている。

補足:カンネヨンさん
  • 社会的企業は、国が政策を開始する前の1990年代に貧困地帯で社会的企業の実験的な取り組みが始まった。
  • ハジャセンターは年間3億円が投下されているが、年間3億円と投資が多いわりに効果(波及)が少ないという批判がある。創造的活動は一般性がなく、全国に普及はしにくい。例 ノリダン
  • 中間支援機関はエリートの場。
  • 脆弱層は投資しても効果があがらないのでソ-シャルインキュベーターなどで、埋もれた才能に投資しようという傾向が見られる。
  • 農村部の例:受け入れる力ができていないのに多額の金を投下しても生かせない。

■用語解説
  • 国民基礎生活保障法~2000年10月「生産的福祉」を標榜するキム・デジュン政権の元、施行、就業可否、年齢に拘わらず最低の生計費に満たないすべての世帯を対象にし、生計費の不足分を支給し、最低限の生活を保障するもの。貧困の責任は社会にあるとする認識。生産的福祉(ワークフェア)の義務。受給者は120~130万人。自活支援事業に参加しているのは、働くことができる人30万人、その中で働いている人20万人、家庭の事情で働かなくてもいい人を除いて6万人ほど。
  • 自活後見機関~1996年に5ヶ所のモデル、2007年から地域自活支援センターに改称、国民基礎生活保障法第16条において設置された低所得者層の自活を促進する支援組織。全国に242ヶ所(2007年)。貧民地域運動・市民運動が母体。民間団体が政府の補助金を受けて自活事業を運営。自活共同体などの立ち上げていく資金、生業資金を政府から調達する支援。全国5万7349人参加(2007年)。
  • 自活共同体~低所得者層が、保護された市場である自活勤労を脱して自立した事業。自活勤労(公的失業対策事業)は一定期間後に自活共同体に射越なければならない。2005年620ヶ所、7,649人就労。介護サービス、建築業、清掃業、廃棄物運搬業、弁当/食事用調理食品製造業など。
  • 社会的企業~社会的企業育成法が2007年7月ノ・ムヒョン政権において施行、脆弱階層に就労を提供するかもしくは社会サービス(教育・保健・福祉・環境および文化)を提供することで「地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的」を追求する企業。労動部が認証しさまざまな支援(費用の融資、公有地の賃貸、公共機関による優先購入、人件費、運営費の助成など)を行う。2010年現在、253団体が認証を受け11,000人が働いている。
  • 脆弱階層~社会的企業法施行令第2条より、所得が全世帯平均の60%以下、高齢者、障がい者、性売買被害者、その他長期失業者など労動部長官が認定した者。

入手資料から
●チャル愛の沿革
  • 2002年
    • 4月 水原希望地域自活センター 市場型自活 勤労豆腐製造事業施行
  • 2003年
    • 3月 (社)私たちの農村を守る運動本部 カトリック教水原教区に豆腐納品
    • 6月 拡張移転 20平米 月25000丁生産規模
    • 7月 京義道 社会福祉共同募金会 企画事業 選定 (工場機能 補強)
    • 9月 チャル愛 事業構想 (未来自活共同体 法案模索)
    • 11月 野宿者 自活事業選定(工場機能 補強)
  • 2004年
    • 1月 チャル愛の目的及び目標設定
      /(社)私たちの農村を守る運動本部 キリスト教ソウル教区へ豆腐納品
    • 2月 仁川地域小学校給食に納品(OEM方式)
    • 7月 チャル愛公式出帆  インターネットカフェ チャル愛会 開設
      チャル愛 経営原則確立
  • 2005年
    • 1月(社)私たちの農村を守る運動本部納品地域拡大(ソウル、仁川、水原、清州)
    • 3月 水原市自活共同体認定(人件費支援4名/共同体 5名)
    • 5月 水原市 장안区정자 洞 私たちの農産物売店 オープン
    • 12月 水原市 장안区정자 洞 純豆腐工場 オープン
  • 2006年
    • 1月 완전自立共同体 形成(一般1名:次常務 3名 ;受給者 5名)
    • 6月 非営利法人 創団大会
    • 11月 安山市ボンオ洞 私たちの農産物売店オープン
      京義道広域自活共同体認証
  • 2007年
    • 4月 京義道 国民基礎生活保障基金 貸出支援によって ヨンファ洞に現工場を拡張移転
      工場拡張とあわせて小規模(家内手工業)形態から中小企業型への転換を模索し、一般市場進出の為の 교두보 確保
    • 11月 アニャン地域自活センター 私たちの農産物物流事業チーム新設
      チャル愛 支店設置
  • 2008年
    • 1月 視話労働者の家 地域自活センター 私たちの農産物物流事業チーム 支店設置
      (チャル愛 物流地域(安山支店) 、安山支店から移管 株式会社チャル愛へ転換
    • 4月社会的企業 認証(労働部)
  • 2009年
    • 3月 無消泡剤・無乳化剤・無化学凝固剤
      100%国内産大豆、純豆腐出資