2012年6月6日水曜日

地域教育訓練センター(Regional Opleidingen Centrum = ROC)

2011年海外調査11月【オランダ】②

訪問日:2011年11月7日、13:00~15:00 訪問場所:Frijlemaborg 141 Amsterdam 1102 CV Amsterdam 担当者:Mr.Johan de Jong (member central supporting staff) 社会的包摂のテーマ担当 Mr Dirk Huiberts (member central supporting staff)


 ●概要 ROC(地域職業教育センター)とは、職業・専門的な後期中等教育とともに成人一般教育、成人職業教育を行う、地域密着型の教育機関。社会生活および個人生活を充実させることを目的に、第2言語としてのオランダ語のコースを成人一般教育の一環として提供している。オランダ人の中等、高等職業訓練学校であるだけでなく、移民がオランダ永住権を取得する際義務付けられている、オランダ市民化コースもここで実施されてる。 ROCは民間機関であるが、オランダの公的な教育体系の下にあり、地方と国家行政からの財源で運営されている。ROCはイギリスの上級教育カレッジ、アメリカのコミュニティ・カレッジにあたります。アムステルダムとフレヴォラントで66カ所の校舎で32,454人が学んでおり、中等職業教育(MBO)の8%を占めていている。2,780人のフルタイムスタッフが働いている。

 ●設立の経緯・背景 オランダは、多くの移民を入れ、社会参加を掛け声にギルド(徒弟制度)主体から公の教育機関主体の人員参加の職業教育を推し進めてきた。国際競争が激化していた1996年、職業教育法 (WEB : Law and Vocational Education) が導入され、幅広い実践的な国民教育がスタートした。対象は、特に層の厚い中等職業教育 (MBO : Secondary Vocational Education) で国内70カ所で実施している地域職業教育センター (ROC : Regional Education Centre) はその最も大きい職業教育実施機関である。 ※「職業教育と教育に関する法(WEB)」 1996年1月1日に実施された職業教育と教育に関する法(WEB)は、従来までの様々な種類の二次的な職業教育と成人教育を一本化し、初期職業教育と訓練、またその後の教育と訓練を一般教育とは別に強化し浸透させることを目的にした。これまでの数々の小規模の教育訓練を統合し、大きな地域ごとに集積したことは、職業教育システム上で大きな意味を持つ。また、この法律で国内の統一された資格システムが確立したことも大きな意味を持つ。 

●オランダの職業教育 ※全体的説明はノバ・カレッジでの説明と重なるので割愛 オランダでは12歳の時点で進路選択があり、職業教育におよそ60%、一般教育に40%がすすみ、ヨーロッパでも早い決断が迫られる。VMBO(中等職業準備教育)から一般教育への進学は難しいが、逆への移行は簡単である。MBOは労働市場への労働力の主要な供給機関であり、経済の基礎、社会の支柱と見なされている。オランダの労働人口のおよそ40%が職業コースを少なくとも第2の職業訓練レベルまでをやり遂げている。 現在、630,000人の学生がMBOで教育や訓練に参加しており、その内485,000人が正規の職業教育コースに在籍している。残りは成人教育プログラムに参加している。政府はこの部門に毎年2,60億ユーロ-を投資しており、その額は教育総予算のおよそ12%を占めている。 

●ROCのコースと職業資格 ビジネス、コミュニケーション、社会福祉・健康ケア、スポーツ、技術、ホテル・ケータリング・レストラン研究、旅行、パン・菓子、航空整備、ファッションと美容、その他成人教育、準職業訓練コースがある。それぞれに4段階のレベルに分類されており、レベル2以上が職業資格となる。ROCにおけるその比率は以下のようになっている。 レベル1 資格なし    3.8% レベル2 最低の資格   25.7% レベル3 スペシャリスト 26.2% レベル4 高等教育に接続 44.3% セントラルヒーティングの管理者や大工さんのような技術職と介護職は労働力不足でレベル2からでも仕事がある。 フルタイムで職業訓練を受講する学生の他、パートタイムの学生は有給で働いていて、その労働は専門科目の実習としてカウントされ教育課程に組み込まれている。また、学校基本コースでは学習期間の20%から60%が実習に当てられ、仕事基本コースでは学習期間の60%以上が実習に当てられている。

 ●社会的包摂政策 移民グループへの特別な教育はないが、オランダ人との間には教育チャンスに大きな違いがある。オランダ人のおよそ70%が一般教育コース(VWO/VWO)に進み30%が職業教育コース(VMBO)に進むが、スリナム人、トルコ人、モロッコ人などの移民グループはその反対の比率である。そして、その職業教育コースから早期に離脱する者も多く、彼らを職業訓練コースへと連れ戻すことが社会的包摂政策として取り組まれている。 ROCの2007から2011年の目標は、毎年学校早期離学者を10%削減し、2011年には2007年以前の40%までに削減することである。その結果、2005-06年には2890人だったのが2010-11年には1984人で31.3%削減することができた。 ここでは厳しさと保護の両面からの社会的包摂政策が行われているが、早期離学者を組み伏せるために、学校を休むすべての学生は地方当局に報告され担当役人から厳しく指導を受ける。移民の者の帰国時に子どもも同行させる親も罰せられることになる。一方では、学生の3分の1は学業を続けることは加重負担であり、コーチを増員して学習の進展や、将来不安や家族問題への援助やケアをすすめている。