2012年6月6日水曜日

オランダの若者団体  ダッチ・ナショナル・ユース・カウンシル(NJR)

2011年海外調査11月【オランダ】⑥


オランダの若者団体  ダッチ・ナショナル・ユース・カウンシル(NJR


訪問日:2011年11月9日(水) 











■概要
オランダの全国的若者団体、34団体を束ねる連合体。この34団体で、オランダの全国的若者団体の80%をカバーしている。34団体の代表からなる総会の決定のもとに動く、7名の若者からなる理事会のもとに、理事長が率いる事務局があり、20名から30名のスタッフがいる。団体のミッションは、若者が、現在と未来において、自分たちと他者のために、その才能を見出し伸ばし用いることである。

■設立の経緯・背景
2000年に、国際社会に対してオランダの若者を代表するVereniging 31、ナショナル・ユース・ディベートを行うNJD、持続可能な開発に関心を持つNJMOの三団体が、政府に対して若者を代表することを目的として合併し発足した。オランダでは、若者団体への加入率が低い(34団体で20%)ので、若者団体に参加していない若者への働きかけも担っている。

■活動の実際・特徴
 活動は、大きく分けて二つあり、提言とプロジェクトに分けられる。提言では、若者に関与する政府等の機関に対して、求められるか否かにかかわらず、政策やその実施に関する提言や、若者の活動の障害を取り除くための提言を行っている。
プロジェクトは、若者自身が動かしているという感覚から発意される。プロジェクトは、①若者政策と政治、②国際関係、③持続可能な開発、④教育・社会問題・若者文化の4つの分野に分かれている。①はNJD、②は Vereniging 31、③はNJMOの活動を引き継いでいる。①においては、オランダ国会を借りて、年に一日行う、ナショナル・ユース・ディベートが最大のプロジェクトで、12歳から18歳の若者が議論を行う。ここでの議論が、チャイルドオンブズマンの設置など、政策決定につながることもある。②においては、国連総会、ユネスコ、持続可能な開発のための国連小委員会、ヨーロッパ評議会へ、オランダの若者の声を届けるため、代表を送る活動を行っている。③においては、たとえば、自分の学校が環境にやさしいかどうかを点検するために、生徒自身が取り組むプログラム「ランク・ア・スクール」を開発して普及している。
④において、社会的排除に取り組むための、いくつかのプロジェクトを行っている。一つは、恵まれない条件にある9歳から12歳の子どもに対して、18歳から25歳の学生を「バディ(仲間)」としてペアにする、「手を取って」というプロジェクトである。一緒に、図書館に行ったり、劇場に行ったり、サッカーの練習をしたり、社会的クラブに行き、可能性を広げる。
また一つは、養護の必要がある、あるいは、非行を行った若者を収容する、ユースケア施設における若者参加を強化するプロジェクトである。NJRの若者指導者が、収容されている若者同士が生活環境について話すように訓練し、施設内の若者評議会や、施設運営者とのディベートを行う。
さらに一つは、「オープン・アップ」である。「身近の人が同性愛(あるいは、トランスセクシュアルなど)だったらどうしますか?」という問いかけを、ポスターの作製、イベントの開催、ディスカッションの実施などを通じて行っている。

■評価・考察
NJRは、ヨーロッパ各国にもある、若者団体を束ねるアンブレラ組織である。しかし、他国に多い、アドヴォカシー機能を中心とした組織ではなく、多くの事業を自ら実施している。日本円にして、2億円の予算を動かしているが、そのうち9割近くは、固定費でない事業経費であり、事務局スタッフもこの経費で雇用している。NJRは、多くの事業を政府から委託されており、若者の社会参加を図るための組織として、政府から信頼されていることが推察される。活動の中心は高学歴の若者であり、低学歴の若者にとっての当事者性は低い。それを補うため、プロジェクト実施に当たっては、参加者の構成を、学歴ごとの人口比に合致させている。