2012年6月6日水曜日

FNV Jong オランダ労働組合連盟若者部会

2011年海外調査11月【オランダ】 ⑦

FNV Jong
オランダ労働組合連盟若者部会

○日時
20111110日(木)9001100

○場所
オランダ労働組合連盟事務所

○インタビュイー
モニカ(政策アドバイザー)
エスター(マネージャー)
キム・コーネリッセンKim Cornelissen(広報担当)

○配布資料概要(一部、当日の聞き取りを追加) 
 FNV Jongは、若者のための労働組合ネットワークである。これは、伝統的な形の組合ではない。FNV は、かつていくつかの若者組織を有していた。だが、FNV Jongは、2006年に設立された。若者組織が再組織化された理由は、労働組合のなかでもっと積極的になるためにはプラットフォームを持つべきだと感じるFNVの若者がいたからである。若者問題についてもっと積極的になるよう、労働組合に対する内外の圧力挙がることも理由の一つである。FNV Jongは、組合の20万人以上の若者を代表する。われわれは数多くの仕方で若者を代表しようと努めている。

 一般的に、FNV Jongは、三つの主たる目的を持つ。
①若者問題に対する政策を作り、労働組合や政府の政策に影響を与える。
②労働組合のイメージを変え、労働組合は古い人々(成人や老人)の地位のためだけに戦うという考えを変える。
③若い労働組合メンバーの積極的な参加を促す。

 われわれは、次のような方法で若者問題に働きかける。
①政策:若者の利害を守るため、政党・政府・労働組合と接触する。例えば、新しい法律が議論に上るときには、積極的なロビー活動(大臣や議会への手紙、請願運動)を行い、積極的に法律に影響を与える。
②イメージ:若者が好きなものについて、じっくり見て、じっくり感じるプロジェクトやキャンペーンを組織化することによって、若者が自分自身を守るよう手助けする。例えば、MTVのようなテレビ局と連携する。
③参加:労働組合内で、若者の地位を強化するよう努める。若者がわれわれのキャンペーンに参加するよう促す。
 これらのことを実行するために、いくつかの会議やプロジェクトを組織化している。
 
 現在、FNV Jongが認識している若者問題は、次の点である。
①若者は組合のなかで自己主張できない。
②若者は自分の権利に気づいていない。
③若者は社会保障に対する権利が少ない。
④若者は家を買ったり、安定した生活を得たりする機会が少ない。

 最近の2年間で、われわれが実行したもっとも重要なテーマは、以下の通りである。毎年、テーマを設定していく。
①若年失業
②フレキシビリティとフレキシブルな労働
③実習生の立場と通常の実習制度(→Coloの話を参照)
④労働市場における若者の立場
⑤若者の最低賃金システム
⑥休暇期間中の労働についての年次調査
⑦若者の労働組合員のネットワーク構築

○インタビュー概要

FNV について
 FNV Jongには、8つのチームに分かれている。①政策アドバイザー2人、②スクール・プログラム・コーディネーター1人、③プロジェクト・サポーター2人、④渉外担当1人、⑤マーケティング1人、⑥渉内担当1人。
 そもそも、FNVは、1906年、ダイヤモンド鉱山の採掘労働者ヘンリー・ポラックが、劣悪な労働環境に抗して、労働者の組織化を行ったことに端を発する。
 FNVは、セクターごとの組合(19組合)のネットワークである。組合員は、140万人である。FNVの代表は、Agnes Jongerius(女性)である。35歳以下の若者組合員は20万人いて、それがFNV Jongのメンバーである。組合を維持するためには若者が必要という認識から、FNV Jong2006年に設立された。

FNV Jongが力を入れるテーマ
①若年失業
 若年失業はとても大きな問題で、現在約9%である。エスニック・マイノリティの失業率は高く、25%に上る。具体的には、ワークショップを行っている。
 ワークショップを行う前に、調査を行った。仕事が見つからない理由には、次のようなものがある。1.差別、2.面接がうまく行かず、仕事を見つけることができない、3.仕事を見つけても、意見を主張することができない。ワークショップでは、面接などのスキル改善を行う。
②インターンの地位改善
 インターンは賃金がもらえないため、地位としては非常に低く、それを問題視している。ウェブサイトで、自分のインターン体験を報告してもらい、それを評価する仕組みを作った。
③労働教育
 学校の休暇中に働く若者たちholiday workersの労働環境に焦点を当て、「ホリデイ・キャンペーン」をしている。来年度のプランとして、いくつかの会社で、若者に労働環境の安全と労働者の権利について講習会を実施する予定である。また、「スクール・プログラム」として、HAVOMBOの生徒たち(1520歳)を対象に、労働者の権利・労働契約のあり方・お金の使い方・ネットワーキングの講習会を行う。これは、いわばキャリア教育の前段階に該当する。
④最低賃金
 若者の最低賃金は低いため、ヨーロッパにおいて署名運動をしている。
⑤社会的ネットワーキング
 社会メディアを使って、社会的ネットワーキングを展開している。そのほか、若者とネットワーク会議を実施している。若者と話し、政策に反映させることが目的である。

オランダの若者政策の動向
 20082009年の金融危機で、若年失業率は約7%から約13%に急上昇した。20093月、FNV Jongは政府に対して対策プランを上申した。その後、6月に対策プランの採用が決定して、9月に政府の社会問題・雇用省によるアクション・プランが成立した。3年で25千万€の予算である。アクション・プランの結果、若年失業率は低下した。ただし、エスニック・グループの第二世代(トルコなど)の問題は、今なお残っている。
 アクション・プランを受け、FNV Jongでも、「どれだけ待たされるの?」キャンペーンを実施した。
 アクション・プランの後、自治体でも若者支援策が実施され、地域ごとにさまざまなプログラムが生まれた。例えば、ユトレヒトでは、雇い主に対して雇用助成金が支払われる仕組みが作られた。そのほか、成功した施策として、若年失業者が、もっと貧しい地域の若年失業者をカウンセリングするプログラムがあった。

オランダにおけるフレキシブルな労働
 オランダでは、フレキシブルな労働が広がっている。35歳以下の若者の場合、65%がフレキシブルな労働に従事している。また、27歳以下の若者の場合、43%がフレキシブルな労働に従事している。これらの若者は、少なくとも34年のあいだ、フレキシブルな労働に従事する。なぜなら、若者にフルタイムの仕事があてがわれることは少ないからだ。これらのフレキシブルな労働では、十分な教育schoolingの機会は提供されない。そして、社会保障の該当期間は、求職している36ヶ月しかないので、パーマネントな仕事を探すには短すぎる。そのあいだに別のフレキシブルな仕事を探さなくてはならない。
 もし、労働時間が短くて、生活に必要な賃金が稼げない場合、オランダの法律上、社会保障の申請は可能である。しかしながら、27歳以下の若者の場合、実際に給付をもらうことは難しい。政府の方針として、27歳以下であれば、別の仕事を探すことが求められるからだ。年齢に応じた規制regulationsの違いがある。
 われわれとしても、セクターごとに雇用を創出するよう働きかけている。ただし、パーマネントな仕事を獲得するためのプロジェクトはやっていない。本人に探してもらうしかない。政府は、もっと労働市場をフレキシブルにしたいと考えている(40%まで)。現在は、2035%である。これ以上、フレキシブルな労働市場にならないよう、われわれはロビー活動をしている。オランダでは、求職中の社会保障は3ヶ月だけである。したがって、フレキシビリティと社会保障securityが一致しているとは言いがたい(フレキシキュリティとは言いがたい)。
 フレキシブルな労働者は、企業のもとで教育を受ける権利がない。つまり、フレキシブルな労働者は、自分で勉強するしかない。雇い主がフレキシブルな若者に職業教育・訓練の機会を提供する=投資するように促す規制は存在しない。したがって、スーパーなどでは、単純労働者として若者が好まれることになる。しかしながら、フィリップスのように、企業によっては、フレキシブルな若年労働者に対して、学校に行かせる企業も存在する。








Dienst Werk en Inkomen (DWI) 雇用・所得センター

2011年海外調査11月【オランダ】④


Dienst Werk en Inkomen (DWI)
雇用・所得センター

○日時
2011118日(火)14301630

○場所
DWI

○インタビュイー
マリア・ブルーセン
モニク・バウマンMonique Bauman(若者担当クライアント・マネージャー)

○インタビュー概要

雇用・所得センターDWIについて
 DWIは、地方自治体の機関である。アムステルダム市の雇用・所得担当の市会議員AldermanDWIに責任を持っている。
 DWIの主な目的は、以下の通りである。
DWIは、アムステルダム市民が仕事を見つけ、アムステルダムの社会に参加することを手助けする。
②仕事を見つけることが目的である。社会に参加することは、規範である。
③上記に加え、DWIは生活できない人びとに(一時的な)所得を提供する。

DWIの活動内容
DWIは、アムステルダム市に代わって、「労働と社会扶助法」と「若者育成法」を実施する。
DWIは、貧困と闘う。
③成人教育と移民統合を指導する。
④生活や環境に対するリスクを伴うクライアントに特別に注意を払う。
⑤若者の失業に注意を払う。

仕事へのステップ
①ケア……例えば、妊娠
クライアント支援、ケアと福祉、他の手段の支援
②社会参加……孤立しないことが目的、アムステルダムの市民生活に参加すること
活性化activation、ボランティア(無償)労働
※ただし、社会参加の中身は成人と若者では異なる。
※例えば、週に1020時間ほどのボランティア労働が求められた。かつては、そのボランティア労働の対価として、1日当たり6€の割増給付があった。しかし、現在はその支給がなくなり、完全な無償である。
③仕事へのステップ(労働市場のための活性化)……仕事について準備する
再統合プログラム、学習・労働プロジェクト、起業プロジェクト、実習生
④仕事へのステップ(労働市場への導き)……労働市場におけるマッチング
仕事の欠員への目配せ、仲介作業、カウンセリング、雇い主へのサービス・ポイント
※労働市場に仕事は存在する。ただし、マッチングがうまく行かない。

各ステップをどのように判断するか
 質問用紙を用いて、クライアントがどのようなステップに該当するか、判断する。質問用紙では、仕事経験、言語、教育歴、病気の有無などの基準を用いる。判断する際、原則はコンピュータによって自動的に行うが、ケース・マネージャーがケースごとに配慮することもある。例えば、移民の場合、コンピュータによる判断はうまく機能しないことがある。移民は低いレベルで評価されてしまうことがある。

その他の支援手法
子供ケア、借金へのカウンセリング、言語教室、費用の立て替え、診断方法
※オランダの若者の問題として、借金の問題がある。銀行が若者にお金を貸すので、ローンや借金を抱えた若者が存在する。若者が自分自身でお金をコントロールできるように手助けする。

クライアントの内訳(アムステルダム市)
①ケア
12735
②社会参加
17040
③仕事へのステップ(労働市場のための活性化)
7500
④仕事へのステップ(労働市場への導き)
3740
未受給
659
合計
41674

DWIのスタッフ
 DWIのスタッフは合計1800人である。ケース・マネージャー一人当たり、6080人のクライアントを抱える。

挑戦
①活性化と再統合予算の削減
②「労働と社会扶助法」改正、「若者育成法」終了予定
③地方経済における雇用者数の減少
④しかし、別の新たな機会もある!
⑤作戦の革新
⑥クライアントのエンパワーメント

若年失業
27歳以下の失業者は3010人。

オランダの状況
 オランダは大きな変化に見舞われている。第一に、金融危機による予算削減である。アムステルダム市民のお金を効率的に活用することが求められている。2013年から、予算削減に基づき、大きく制度が変わる予定。第二に、政府と市民のあいだの社会的対話が求められている。市民に何ができるか、コミュニティの自立化を考える必要がある。

DWIが支援する若者
 若者は、1727歳を指す。ただし、年齢によって対応が異なる。
 17歳は、義務教育に行く年齢なので、基本方針は学校に戻すことである。そのため、学校や両親に問い合わせる。だが、若者が学校に戻ることを拒否した場合、興味のある分野で、6ヶ月の賃金なしの実習生をさせる。
 18歳は、義務教育の年齢ではないので、学校に行く必要はない。このとき、所得の権利が発生する。成人と見なされ、自由にすることを決めることができる。つまり、若者が18歳以降になると、17歳以下のときと別の仕組みが適用されると言える。
 17歳という年齢は、制度のなかで見失われがちな年齢である。17歳以下の若者を対象に、地域のなかでネットワーク会議が毎月開催されている。ここで、若者の個人ケースについて話し合う。アムステルダム市には、4つの地域ブロックが存在する。このネットワーク会議は、今から20年前くらいに始まった。モロッコ移民が問題になり、犯罪が増えたことが契機である。イニシアティヴは警察であった。現在も、コンピュータを利用して、リスクを抱えた若者の情報を共有している。

ジョブコーチ・プロジェクト
 アムステルダム市では、1827歳の若者を対象に、ジョブコーチ・プロジェクトを実施している。このプロジェクトは、6ヶ月という期間、①学校に行く、②学校と仕事に行く、③仕事に就くという選択肢から選んでもらい、その際に必要なものを提供する。6ヶ月でうまくいかない場合、3ヶ月の延長もある。もし、この過程で問題を抱えているようなら、医療診断を受けさせて、医師のアドバイスをもらう。担当マネージャーは、一人当たり1012人の若者を担当する。

オランダの給付
1827歳 200800€/月
※年齢に応じて異なる。18歳は200€、27歳は800€。
2765
シングル 875
シングル+子供 1045
夫婦+子供 1200
※参考値として、最低賃金の月給1415€、平均月給2500€。

若年失業に対するDWIの責任
 18歳までは、DWIは若者の状況について知る義務がある。しかしながら、18歳以上の場合、DWIは窓口に来た若者にだけ対応する。 










ユーススポット Youth Spot Reseach and practice centre Youth Work

2011年海外調査11月【オランダ】⑪




ユーススポット Youth Spot  Reseach and practice centre Youth Work

訪問日:2011年11月11日(金)



■概要 「ユーススポット」はソーシャルワークを実施する7つの団体(大学、ROCなどの学校)が連携した組織。
この組織ではユースワークの専門職化を促進する為、ユースワークに関するリサーチと実践を行っている。オランダのユースワークはプロとして実践されている事が特徴である。
実際に訪問した先は大学の教室の一室。特にこの組織の建物があるという事ではなく、連携組織。

■目的 ユースワークを専門職化を普及する事により、若者と社会の未来に働きかける事を目的としている。

■活動内容(プレゼン内容)
アムステルダムの若者の現状について 
この10年オランダでは非常に格差が大きい社会になっている。移民、貧困、教育不全、ホモセクシャル、肌の色など様々な理由から社会的に排除される若者がいる。
ユースワークは専門職化しにくい分野(対象になる若者や社会の変化、分野としてもまだ小さい)であるが、ユースワークの専門家を増やす事ユースワークの専門職の質を上げる事の2つが目的として活動している。
専門職になる事の4つの条件は特定の知識、手法、能力、自立的な判断力(ユースワークの範囲を知る事)
ユースワークが普及しない2つの理由 対象がわかりにくい(若者のニーズが常に変わる。)分野として小さい。
例 Open Youth Work  誰もが参加できるユースワークの手法として紹介


OPZET (実践に基づいた研究)の紹介

 文献調査
6人の学生が5か所のユースセンターで活動し、参与観察する。
ディスカッション先生とユースワーカーにて
調査を元に分析と研究を行う。
成果物
論文とユースワーカーの為の教材作成


文献調査と実践を合わせた調査研究の説明

*リスクのある若者に対するユースワークについて(ここからはユースワーカーのセバスチャンさんからの説明)
リスクのある若者は家族問題(家が小さい、貧困、大家族など)教育の貧困、移民問題、犯罪に関わる問題、ストリートカルチャー(悪い事がかっこいいというような風潮)などがある。
ユースワーカーが現場で実践する3つの仕事
1)若者をグループ活動に参加させる事→スポーツや文化活動などに参加をする事により若者を社会化する。2)若者の様子をみる事→活動に参加したり、その他の場面でも若者の変化や問題に対して見守る事。3)他の専門職と協働する事→例えば学校へ行っていない若者がいたら学校との連携をするなど他団体や専門家と協働する事で若者を支援する。
(実践例) スポーツを通したユースワークの実践
若者自体にリーダーシップを取ってもらう実践。若者自身が輝く事も含め、実際に実践する事によってその後の進路にも良いアドバイスを与える事ができる。単なるアドバイスではなく、実際に実践する事により本人が体感する事が大切。
ユースワーカー自体がプロとして教える事から始まり、少しずつ若者自体に責任を持たせた仕事をさせつつ、出来た事は褒めたり、リーダーとしてするべき事ができなければ怒ったりして達成感を味わわせるまでサポートする。

ユースワーク普及の壁
リスクのある若者への対応が多い事、定時で終わる事ができない仕事 (問題が起きた時にいつでも対応しなければならない。)などがユースワークの職業普及への壁となっている。
また、ユースワーカーは様々な場面で道徳規範を問われる事がある事、また国の予算の削減もあり、来年度以降のユースワークへの予算削減も予想されている。
ユースワーカーとしてのするべき事、心得について最後に説明があった。
町で起きている事をよくわかる事、政治についてきちんと情報を持つ事、関係をつながり続ける事が大事である。

■質問・考察
質問1)困難な学校との連携は出来ているか? 
学校との連携はしているが、困難な若者に関してはグループとしてほとんど把握されている。
2)対象は何歳~何歳まで? 10歳~15歳 16歳~24歳(それぞれに違うアプローチをしている。)(10歳以下はチルドレンワークとしてケアされている。)
3)就労への促し等はしているか?
ユースビューローという若者専門の仕事紹介所があり、そのような機関と連携している。
4)ユースワーカーの主な活動場所は?
ユースセンター、スポーツセンターなど、また天気がよければ野外での活動など。



オランダの若者団体  ダッチ・ナショナル・ユース・カウンシル(NJR)

2011年海外調査11月【オランダ】⑥


オランダの若者団体  ダッチ・ナショナル・ユース・カウンシル(NJR


訪問日:2011年11月9日(水) 











■概要
オランダの全国的若者団体、34団体を束ねる連合体。この34団体で、オランダの全国的若者団体の80%をカバーしている。34団体の代表からなる総会の決定のもとに動く、7名の若者からなる理事会のもとに、理事長が率いる事務局があり、20名から30名のスタッフがいる。団体のミッションは、若者が、現在と未来において、自分たちと他者のために、その才能を見出し伸ばし用いることである。

■設立の経緯・背景
2000年に、国際社会に対してオランダの若者を代表するVereniging 31、ナショナル・ユース・ディベートを行うNJD、持続可能な開発に関心を持つNJMOの三団体が、政府に対して若者を代表することを目的として合併し発足した。オランダでは、若者団体への加入率が低い(34団体で20%)ので、若者団体に参加していない若者への働きかけも担っている。

■活動の実際・特徴
 活動は、大きく分けて二つあり、提言とプロジェクトに分けられる。提言では、若者に関与する政府等の機関に対して、求められるか否かにかかわらず、政策やその実施に関する提言や、若者の活動の障害を取り除くための提言を行っている。
プロジェクトは、若者自身が動かしているという感覚から発意される。プロジェクトは、①若者政策と政治、②国際関係、③持続可能な開発、④教育・社会問題・若者文化の4つの分野に分かれている。①はNJD、②は Vereniging 31、③はNJMOの活動を引き継いでいる。①においては、オランダ国会を借りて、年に一日行う、ナショナル・ユース・ディベートが最大のプロジェクトで、12歳から18歳の若者が議論を行う。ここでの議論が、チャイルドオンブズマンの設置など、政策決定につながることもある。②においては、国連総会、ユネスコ、持続可能な開発のための国連小委員会、ヨーロッパ評議会へ、オランダの若者の声を届けるため、代表を送る活動を行っている。③においては、たとえば、自分の学校が環境にやさしいかどうかを点検するために、生徒自身が取り組むプログラム「ランク・ア・スクール」を開発して普及している。
④において、社会的排除に取り組むための、いくつかのプロジェクトを行っている。一つは、恵まれない条件にある9歳から12歳の子どもに対して、18歳から25歳の学生を「バディ(仲間)」としてペアにする、「手を取って」というプロジェクトである。一緒に、図書館に行ったり、劇場に行ったり、サッカーの練習をしたり、社会的クラブに行き、可能性を広げる。
また一つは、養護の必要がある、あるいは、非行を行った若者を収容する、ユースケア施設における若者参加を強化するプロジェクトである。NJRの若者指導者が、収容されている若者同士が生活環境について話すように訓練し、施設内の若者評議会や、施設運営者とのディベートを行う。
さらに一つは、「オープン・アップ」である。「身近の人が同性愛(あるいは、トランスセクシュアルなど)だったらどうしますか?」という問いかけを、ポスターの作製、イベントの開催、ディスカッションの実施などを通じて行っている。

■評価・考察
NJRは、ヨーロッパ各国にもある、若者団体を束ねるアンブレラ組織である。しかし、他国に多い、アドヴォカシー機能を中心とした組織ではなく、多くの事業を自ら実施している。日本円にして、2億円の予算を動かしているが、そのうち9割近くは、固定費でない事業経費であり、事務局スタッフもこの経費で雇用している。NJRは、多くの事業を政府から委託されており、若者の社会参加を図るための組織として、政府から信頼されていることが推察される。活動の中心は高学歴の若者であり、低学歴の若者にとっての当事者性は低い。それを補うため、プロジェクト実施に当たっては、参加者の構成を、学歴ごとの人口比に合致させている。

オランダの研究機関 オランダ青少年研究所(NJi)

2011年海外調査11月【オランダ】⑤
訪問日:2011年11月9日訪問


■概要 NJiは、子どもと若者に関する問題に関する知識を、公的セクターのために、発展させ集積し明確化し普及する、独立した非営利の機関である。学校を除くあらゆる分野で子ども・若者とかかわる実務家の知識ニーズに、科学的研究の成果を結びつけ、政策・プログラム・実施について助言を行うほか、エビデンスに基づく手法に関して実務家を訓練することで、実務の支援を行っている。海外の専門家や知識センター、研究所と、科学的発展及びグッドプラクティスについて情報交換を行い、オランダ国内のサービスと政策を向上させると同時に、若者支援における国際的発展にも貢献している。資金は国(健康福祉スポーツ省)から得ている。スタッフは、およそ140人。

■目的 主たる目的は、若者やその保護者に対するサービスの質と有効性を高めることによって、子どもと若者の適切な発達を促進することである。

■アプローチ リスクのある若者と、そうでない若者のギャップを縮めるため、予防的・普遍的サービスを重視している。すなわち、子ども・若者の「正常な」発達と養育について包括的な見方をとり、子ども・若者サービスをポジティブに方向づけて、子ども・若者に社会の一部となってもらうことを目指している。

■活動 NJiの活動の核は、「知識センター」であり、エビデンスのデータベースを構築して、子ども・若者分野で働く専門家に対して、有効な手法と介入に関する、専門性を提供すると同時に、専門家が、これらの有効な手法や介入を実践して、その結果をモニターするように背中を押している。その一方で、NJiは、現場から得た知識を統合し、それについての科学的証明を行い、エビデンスに基づいた実践として、現場に返している。
 オランダでは、若者家庭センターが新たに各都市で設置されるとともに、保護者と子ども・若者のための予防的な支援システムの根幹として、学校・ユースケア・福祉施設が、ユースケア助言チームとして協働している。NJiは、健康で有能で幸福な子どもと有効な子育てに向けた、一貫した若者政策の基礎である、若者家庭センターと助言チームを支援している。
 NJiがとりわけ力を入れているのは、オーストラリアで開発された子育て支援プログラムTriple Pの普及である。Triple Pとは、Positive Pedagogical Program(ポジティブな教育的プログラム)の頭文字をとったもので、ポジティブ志向が強い。その目的は、有能な親を増やし、ポジティブな子育てを推進し、親同士のコミュニケーションを図り、家族内のストレスを軽減することである。Triple Pの介入は、①一般へのチラシ配布など一般的な情報提供、②子どもの発達についての、親との個別の一般的な会話、③何らかの心配事をもつ親との個別の相談、④重大な問題がある場合のグループ訓練、⑤家族介入の5段階から成っている。すなわち、普遍的な地域全般への介入から、ハイリスクの家族への直接介入までのも含む、段階的・包括的な介入である。オランダではまだその効果は実証されていないが、NJiは、外部の専門家から成るaccreditation committeeによって効果のある介入と判定しデータベースに含めて普及を図っている。オランダには、約400の自治体があるが、そのうちの100以上の自治体が、この6,7年間で導入している。現在、エビデンスを確認するための研究が進行している。
■感想・考察 子ども・若者支援に関する、有効なエビデンスの蓄積・普及、そして、エビデンスに基づく実践の支援を行う、知識センターである。今の日本に、まさに欠けている機関であり、このようなものがオランダにあるということは刺激となった。印象的であったのは、子ども・若者支援にあたって、ハイリスクに焦点を当てたターゲット・アプローチではなく、ポジティブな予防的サービスを中心とするポピュレーション・アプローチを中核においていることである。子ども・若者を問題と見るのではなく、「正常な」発達の対象として支援するポピュレーション・アプローチが採用されているのは、(おそらく)費用対効果がよいばかりでなく、児童の権利やアクティブ・シチズンシップの考え方とも相性がよいからであろう。

韓国グループホーム・青少年センター

2010年度3月海外調査(韓国) [NO.1]


訪問先名称:社団法人「野の花 青少年 世界」仁愛ひまわりグループホーム 野の花青少年センター、花屋Dream Flower(予備的社会的企業)
訪問日時:2011.2.27


【団体の概要】
社団法人「野の花 青少年 世界」事務局長のキム・クムフン氏によると、この団体は、10代の若者のために、グループホームにおけるケア、代案学校(フリースクール)、作業場としての花屋によって、「ケア+教育+生産」を行っている団体である。
この団体のはじまりは、シンナーを使っている若者15人が教会で寝ていたことからであるという。牧師が事情を聴くと、彼らは家に帰れる状況ではなく、まず一緒に暮らしはじめることになった。ついで、彼らの中には学校に通っていない者も多かったので、代案学校をつくった。そして、その後、成人して自立しなければならなくなってくるため、生産の場として花屋をつくったという。つまり、初めから「ケア+教育+生産」を目的として団体を創設したのではなく、目の前にいる若者の必要に応じて、活動が展開されてきたのである。このように手広く活動を行っている団体は他にはないともいう。

【グループホーム】
韓国訪問初日、金浦空港から地下鉄を9号線、4号線と乗り継いで1時間40分ほど南へいった安山(あんさん)市の古桟駅につく。通訳のカン氏によれば、安山市は人口約75万人、いわゆる3Kの厳しい労働が集積する工業団地で共働き家庭が多く、また、地方から若者が多く集まる場所であるという(家を出たら、安山に行けば何とか生きられるという感覚があるという)。駅から車で10分ほどのところにある新しいとは言えないマンション(アパート)の一室が仁愛ひまわり(インエ・ヘバラギ)グループホームである。日本の児童養護施設のグループホームにあたる場所であり、親の離別・死別、貧困などにより、親が育てることが難しい子どもたちが住んでいる福祉施設である。
このグループホームは、社団法人「野の花 青少年 世界」が持っている12か所のグループホームの一つである。10か所が安山市にあり、残りの2か所がソウル市にある。この団体が持っている10か所を含めて、安山市には30のグループホームがある。京畿道には90か所、全国には約400か所があるという。1か所に5~6人の子どもが住んでおり、現在、安山市の団体のグループホーム10か所で計50名がいる。日本と同様、施設からグループホームへと移行が進んでいるというが、市内には、日本で言う大舎制の施設が1か所あり、そこに約70名の子どもが住んでいるという。
グループホームの施設長オウ・スンソクさんとソーシャルワーカーのキム・ジョンアさんは夫婦である。4LDKの部屋に、夫婦と夫婦の実子2人(4歳と2歳)、そして、6人の男の子が住んでいる。4部屋のうち、1つは夫婦家族の部屋、1つは事務室、残りの2部屋に男子3人ずつが住んでいる。家の購入費・運営費は個人が支出するが、2人の人件費と補助金が行政から出されているという。この施設は夫婦で運営しているが、必ずしも一般的ではない。
男の子たちは、12~19歳、多くの場合、学校の教員や牧師、周囲の人がグループホームに連絡してくることによって、ここにつながるのだという。
彼らは、ここから学校に通ったり、代案学校(オルタナティブ・スクール)に通い検定の準備をしたりする。放課後は、学校での放課後アカデミーや地域児童センターで勉強をする。放課後アカデミーは、学校で行う学習サークルであり、地域児童センターは、貧困家庭の学習支援、保護・ケアを行う施設である。後者は、当初民間で始まったものが公的なものとなり、全国に3700か所、安山市に60か所あるという。センターでは、狭い意味での学習だけではなく、「人文学」も扱っている。具体的には、体験プログラムや、図書館で新聞や本を読んで討論するなどの活動が含まれるという。
グループホーム退所後の進路は、主として、就職、就職はできないが自立する、大学進学という3つの道があるという。今回、グループホームを出る14人のうち、就職が3人、大学進学が4人、3人は元の家族に戻り、2人は自立の準備ができずに施設にとどまり、3人は就職先が見つからないまま巣立っていくという(人数が合わないのは重複があるからか)。施設を出る時に、300万~500万ウォン(約24~40万円)の自立支援定着金が出され、アパートを借りるときなどに用いられる。その他に、奨学金や国民基礎生活保障法による補助があり、金銭面で進学できないことはほとんどないという。
スタッフの資格は、社会福祉士または保育士で、施設長には社会福祉士が必要とされる。キム・ジョンアさんは、教員、相談士、青少年指導士の資格を有している。
このあと、別のアパートの一室にある女子のグループホームも見学した。中3~高3の女子5人を女性2人のスタッフが担当していた。

【青少年センター】
この社団法人がもつ青少年センターは、無認可の代案学校(フリースクール)のほか、図書室、木工室、食堂、裁縫室、英語教室、バンド室、食堂などが入った4階建(?)の建物である。
貧困家庭の子ども40名が利用している。外国人児童向けのハングル講座も開かれている。
建物は、3億ウォン(約2400万円)の寄付を得て建てられており、音楽学校の講師費用や裁縫室のミシン、食堂の米なども寄付で賄われている。各部屋の名称には、寄付をした企業名も用いられている。
スタッフは、常勤が昼5名、夜3名でその他に非常勤のスタッフがいる。

【花屋(予備的社会的企業)】
青少年センターから車で移動した幹線道路沿いに花屋が4~5軒並んでいる。そのなかの一つが予備的社会的企業の花屋である。
この花屋では、3人の若者がローテーションで、半年~1年の間、掃除から植え方までの訓練を受けている。この花屋の代表は、専門家として社団法人から雇用され、若者に花屋を経営するノウハウを伝えている。月2500万ウォン(約200万円)の売上の3~4割が純利益であり、それを社団法人に寄付している。インターネットでも注文を受け、他の花屋とのネットワークを用いて配達をする。
社団法人を創設した牧師が、学校に通っていない若者と生活をともにするために当初は農場をつくろうとしたが、代案学校をつくったため、収益事業として花屋を創設し、その利益を団体に寄付するかたちをとった。

【アウトリーチ】
団体では、最近、アウトリーチの活動も行っている。派手にペイントした38人乗りのバスを、繁華街の公園などの路上に出して、夜に家を出ている若者のための移動相談をするのである。必要に応じて、休憩場所や食べ物、下着を提供したり、相談を受けて他機関と連携して対応したりしている。これらを通して、若者の生活の調査研究も行っている。
バスは、現代自動車からの援助による。運営費は、カン・ヒョック氏が属する社会福祉法人「walking with us」から寄付を得ている。「walking with us」は、大学教員である篤志家から毎年15億ウォン(約1億2000万円)の寄付を受けている。

【考察】
社団法人「野の花 青少年 世界」のヒアリング、そして今回の韓国調査を通じて感じることは、第一に、社会的活動を民間の寄付が支えているという点である。団体の青少年センター、グループホームを支える各企業、walking with usへの篤志家の多額の寄付など。2日目以降のヒアリングでも、IMF危機時に国民が一体となって集めた金や寄付金が元手となって社会的企業を支えている財団(ともに働く財団)が創設されていた。もちろん日本でも、児童養護施設などの福祉施設やNPOの中でも民間企業や篤志家からの多大の寄付を得ている団体は少なくないであろうが、今回の調査の印象では韓国の方が民間の貢献活動が一般化しているように思われた。この点は、調査対象の特性の偏りも否めないため、量的な比較の上でも違いが見られるかの確認が必要となる。しかし、イギリスやニュージーランド等、アングロサクソン系でキリスト教が中心の国々が、単なる公的支出を切り捨てるだけの「ネオリベ」ではなく、「大きな社会」を伴った「新自由主義」(宮台2009)に近いとすると、キリスト教徒の多い韓国が、日本と同様に教育や福祉への公的支出が小さい(相対的に「小さい国家」)一方で、日本と比して相対的に「大きな社会」である仮説はありうることであろう。
第二に、進路としての進学、そのための学力形成への社会的合意がほとんど疑われていないように見えることだ。日本では、「受験戦争」への抵抗感や不登校の増大への対応から、「学校的価値」が切り下げられ、「ゆとり教育」への制度的変化や、それをとおした学力低下、その階層間格差の拡大が指摘されている流れがある。韓国での教育政策への変化や人々の反応はわからないが、一方で代案学校(オルタナティブスクール)が生み出されてはいるものの、学力形成への合意は疑われずに存在しており、それに向けて「大きな社会」が背後で支援しているように見える。だが、それは必ずしも狭い意味での学力に限られたものではないのかもしれない。韓国において「人文学」という言葉が表す意味内容が気にかかる。
そして第三に、それらを背景として、社会的企業が、いくつかの傾向性の異なる機能を果たしているということである。今回の予備的社会的企業である花屋は、福祉団体が、典型的な社会への移行とは異なる状態にある若者の移行を支援する目的で設立したものである。しかし、これは二日目以降の調査を考えると、社会的企業の全般的な性質ではないと思われる。一方では、大卒など高学歴の若者が起業の一つの形態として、あるいは社会的な意思を実現させようとする形で設立されている。このような形態によって、学歴インフレで大手企業に就職できない若者の社会への包摂、あるいはそれを通した柔軟で創造的な発想を社会経済へ生かす機能を有している。他方で、そのような団体の一部が、障がいを有している等、典型的な移行を果たせない困難を抱えた若者の就労体験や就労の場を提供している。花屋は後者の形態の一つであろう。
実際に、前者のような団体がどれだけ企業体として自立できるのか、後者のような団体が(援助を受けたままであったとしても)就労支援として有効な機能を果たしうるのかはわからない。しかし、いずれにしても現在のところ、社会的企業は、国家の成長やそのための学力形成の意義を疑うことなく、人々を動機づける機能、それへの社会的支出を正当化する機能は果していると言えるかもしれない。
現在の韓国の雰囲気として、IMF危機を乗り越えて経済が上り調子にあるように思われた。しかし、景気が悪化したときに、あるいは政権が交代したときに、現実の機能が問題にされて、社会的企業やその他の社会的な支出が削減される可能性もある。だが、他方で、このような社会的支出が、経済が危機的な状況にあるときに生み出されたことも忘れてはならない。日本では、現在のように経済が厳しい状態にあるときに、税金やその他の社会的支出を出すよりは、むしろ「無駄遣いの削減」が叫ばれて、民間の寄付も公的支出も削られていく流れがある。
仮に、韓国と日本の「社会」の大きさが異なっているとすれば、それがどのような文化や制度の経路の上に生じているのか、実際の政策や制度のどのような違いに表われているのかを探究することが有益であろう。

水原市(スウォン市)経済政策局

2010年度3月海外調査(韓国) [NO.1]


訪問先名称:水原市(スウォン市)経済政策局
訪問日時:2011.2.28


【概要】
社会的企業は、全国の自治体での取り組みが始まったところである。そこで、水原市の社会的企業施策について聞いた。
水原市はソウルから電車で1時間、人口100万人の大都市、韓国最大の企業であり、世界最大級の電機メーカー、サムスンの地元。ユネスコ世界文化遺産華城がある。
14時 水原市駅に職員が車で出迎えてくれた。市役所に移動。
14時~14時30分 観光センターで水原市の概略の説明を受ける。
14時30分~15時30分 局長室で、局長と担当職員から社会的企業に関する説明を受ける。

【若年雇用問題に関する局長の認識】
仕事はたくさんある。しかし、高学歴者に合った仕事が少ないということ(カンネヨンさんのコメント:間違っている)。社会的企業は若者というより、脆弱層(高齢者、障害者などの貧困層)を対象とする施策と考えている。脆弱層のために社会的企業法を作った。2010年に改正し、若者の方に目が移っている。若者の失業率は8%。青年インターン制度、職場体験、ベンチャー支援などをやっている。施策の理由は、従来は終身雇用だったが、技術発達のため寿命が短くなっているため。
韓国では非正規雇用とはいわない。常用雇用(1年以上の雇用契約)対 臨時雇用、という区分
水原市は6割が自営業、7割がサービス業、人口は100万人
職業訓練は国の事業なので水原市はかかわっていない。また、訓練は3K職には必要ない。

【社会的企業について】
日本のコミュニティビジネスが中国に紹介されているが、これは、地域作りで利益を出さなくても良いものという認識されている。一方、社会的事業は利益を出さなければならない。韓国の社会的事業は世界のどこにもないユニークな仕組み。地方自治体でモデルを作っている段階。
水原市に22団体、全国に329団体ある。国の労働部中心から自治体に1部をおろすことになった。国から財政支援を受けている。
なぜ社会的企業が必要になったのかといえば、IMF通貨危機以後、回復したが安定した仕事にならなかった(質のよい仕事が少なく持続可能性が低い)。高齢化問題から社会サービスに対するニーズが高まる。若者も仕事がないため、社会的企業への期待がある。

【水原市の取り組みの流れ】
  • 2010年8月30日 社会的企業育成総合計画策定
  • 2010年9月8日 社会的企業ネットワーク協議会を編成
    (専門家、協力機関、社会的企業代表、公務員など10名)
  • 2010年11月17日 社会的企業育成
  • 2010年11月24日 水原市社会的企業協議会のスタート
    (講演、ビジョン発表、フォーラム開催など)
  • 2010年12月16日 社会的企業説明会開催
    (自活共同体、社会的企業に関心がある人、参与16名)
  • 2011年2月23日 社会的企業育成委員会

【推進目標】
水原市は2014年までに社会的企業を100団体作る予定
  • 2010年 20団体 550人
  • 2011年 35団体 800人
  • 2012年 56団体 1100人
  • 2013年 74団体 1300人
  • 2014年 100団体 1500人

【事業概要】
  1. アイデア大会 8700万ウオン
  2. 世界を変える1000の職業行事イベント 3万ウオン
  3. 水原(スウオン)型予備社会的企業育成 3万3334ウオン
  4. 社会的企業事業費および人件費支援 9万6千ウオン(1人120万ウオン)
   補足:社会的企業への財政支援(エコウエディングの場合)
     3年間 1人毎月92万ウオン(最低賃金)の90%(80万ウオン)が支援される。
     10人以上の企業だと100万ウオンが150万ウオンになる。
     自治体ごとに金額が違う。首長選挙の時の公約に出ている。

育成するためには基盤作りが必要
   ネットワーク協議会
   行政が支援 ベンチマーク、各部署別に登録する
若者を募集して**モデルを作る
   3つを選んでモデルとする
   3000万ウオン×3団体 起業支援
   1000万ウオン 営業
IMF通貨危機の際、一時的仕事を作って失業者を吸収したが、持続可能性がなかったという反省から、社会的企業作りとなった。
広域自治体で条例作りをし、その後基礎自治体で条例を作っている段階。
スウオン市は早い方だったが、最近始まったところである。22団体る。
内訳 10件の認証社会的企業、249人の雇用
    12の予備社会的企業 372人の雇用
全国では1025団体 キョンギドウは193団体

【運営実態】
  地域条件に合った社会的企業、アイテムを発掘しようとしているがまだ十分ではない。まだ広報不足
  大部分は国家の支援を通して脆弱階層の雇用を作るかサービスを提供する型

10の認証社会的企業のリスト
  • 2007年 豆腐と豆の製造 雇用提供型 従業員6名
  • 2007年 美容サービス その他型 4名
  • 2007年 清掃衛星管理 その他型 85人
  • 2009年 家事・保育・産母サービス 雇用提供型 10人
  • 2009年 スウオンYMCA その他型 ??? 11人
  • 2009年 コーヒー専門店障害者塾(学院)運営 雇用提供型 9人
  • 2009年 希望連帯 ホームレス雇用 雇用提供型 16人
  • 2010年 老人雇用、清掃・警備 雇用提供型 38人
  • 2010年 障害者支援・福祉サービス提供 社会サービス型 18人
  • 2010年 専門クラッシック演奏 その他型 50人

【社会的企業の4タイプ】
  1. 雇用提供型 脆弱階層に雇用提供 従業員の30%以上が脆弱層
  2. サービス提供型 サービスする相手の中に脆弱階層が30%以上
  3. 混合型 脆弱階層が20%以上、対象者の20%が脆弱階層
  4. その他型 脆弱階層雇用比率と社会サービス提供比率の判断が難しい。労働部が決定する
市役所を出て、社会的企業豆腐製造事業所に移動する途中の道路の壁画プロジェクトに案内された。市民創造大会で2位に選ばれたプロジェクト。作ったのは29歳の男性で大学卒業直前。壁画の前で説明をしてくれた。
ここはもっとも交通量の多い道路で、バス停留所がある場所。長い塀が歩道に沿って立っている。この塀に落書きが絶えず、汚く殺伐とした雰囲気になってしまう。自分はすぐ近くに住んでいるので残念でたまらなかった。そこで、この壁にハングル文字の組み合わせができる仕掛けのボードを作った。市民や子ども達がそれで遊ぶようになった。その後、落書きがなくなった。彼は地域振興と学生をつなげる社会的企業家を目指している。

水原市社会的企業豆腐製造業「チャル愛」(豆腐と豆の製造工場)

2010年度3月海外調査(韓国) [NO.5]


訪問先名称:水原市社会的企業豆腐製造業「チャル愛」(豆腐と豆の製造工場)
訪問日時:2011.2.28



【概要】
市役所職員2名に案内されて、豆腐製造工場を見せてもらい、2階の事務室で話を聞く。

2002年に自活センターで豆腐製造で働いていた。ここは、生活保護受給者の自立のための職場で、18-64歳が対象。公共サービス型と市場型(2-3年で独立すること。給料は国から出る。資金は、国50、広域自治体25、基礎自治体25)がある。

2005年 3年間かかって準備して、水原市から自活共同体として認定を受ける。2名以上が働いていることが条件。豆腐製造事業を始めた。8㎡の小さい空間。その時は参加者として働く。生協から認定してもらう。オーガニック豆腐を作る。もともとは事業に失敗してアル中になり、ホームレスのシェルターにいた。しかし自立しなければと決心して酒をやめ、持続性のある仕事に向かった。

2008年 社会的企業の認証を受ける。生協に納品。学校給食や会員向け販売も始める。
店を借りるのに市、県が補助金を出してくれた。脆弱階層を雇用する。4人を雇用。
受給者からの自立が大事。自分は苦労したので次の人を助けようと思って活動している。
成果:2人は受給者から採用。1人はシェルターにいたが自立した。ここを通して4人が他に就職。社会的企業は、一人でがんばっても成功できない。融合しないとできない。民間共同でないと難しい。自治体との関係が大事―設備の提供、市がもっている建物の提供や安い賃貸。優先購入、資金がないので外部の支持なしにはやれない。しかし競争なしにはやれない。

脆弱層の自立のためには、社会の一員として生きる希望をもてることが大事。キムさんの人生の話を聞かせる。普通の人は隠そうとする。耐えられない人は自活センターで勤労を続けるしかないだろう。リーダー自ら見本を見せること。ロールモデルを作ること。自活センターで手当てをもらうためにしかたなく働く人が多い。自分は時間外まで働いた。それを回りに見せた。
現在、キムさんには講演依頼がたくさん来る。TVや取材も来る。そのような折には、「今のようなみじめな生活をするのか?」と聴衆に問いかける。脆弱な個々人のケースワークでは効果が上がらない。社会性をつけることをやらないと、働けといっただけではだめ、共同体(コミュニティ)が大事。

◆ キムドンナム氏は、努力して這い上がり、成功を勝ち取った自信にあふれている。社会的企業のなかでも代表的な成功事例のようで、多数の講演やTV取材を受けて、恵まれない人々に対して自分の経験を語り、がんばれば自分のようにどん底から這い上がることができると説いて、脆弱層の支援に身を投じている。行政とも親しい関係にあり、水原市における社会的企業の展開の先頭に立っている。2011年には東京、名古屋に招待されている。

補足:カンネヨンさん
  • 社会的企業は、国が政策を開始する前の1990年代に貧困地帯で社会的企業の実験的な取り組みが始まった。
  • ハジャセンターは年間3億円が投下されているが、年間3億円と投資が多いわりに効果(波及)が少ないという批判がある。創造的活動は一般性がなく、全国に普及はしにくい。例 ノリダン
  • 中間支援機関はエリートの場。
  • 脆弱層は投資しても効果があがらないのでソ-シャルインキュベーターなどで、埋もれた才能に投資しようという傾向が見られる。
  • 農村部の例:受け入れる力ができていないのに多額の金を投下しても生かせない。

■用語解説
  • 国民基礎生活保障法~2000年10月「生産的福祉」を標榜するキム・デジュン政権の元、施行、就業可否、年齢に拘わらず最低の生計費に満たないすべての世帯を対象にし、生計費の不足分を支給し、最低限の生活を保障するもの。貧困の責任は社会にあるとする認識。生産的福祉(ワークフェア)の義務。受給者は120~130万人。自活支援事業に参加しているのは、働くことができる人30万人、その中で働いている人20万人、家庭の事情で働かなくてもいい人を除いて6万人ほど。
  • 自活後見機関~1996年に5ヶ所のモデル、2007年から地域自活支援センターに改称、国民基礎生活保障法第16条において設置された低所得者層の自活を促進する支援組織。全国に242ヶ所(2007年)。貧民地域運動・市民運動が母体。民間団体が政府の補助金を受けて自活事業を運営。自活共同体などの立ち上げていく資金、生業資金を政府から調達する支援。全国5万7349人参加(2007年)。
  • 自活共同体~低所得者層が、保護された市場である自活勤労を脱して自立した事業。自活勤労(公的失業対策事業)は一定期間後に自活共同体に射越なければならない。2005年620ヶ所、7,649人就労。介護サービス、建築業、清掃業、廃棄物運搬業、弁当/食事用調理食品製造業など。
  • 社会的企業~社会的企業育成法が2007年7月ノ・ムヒョン政権において施行、脆弱階層に就労を提供するかもしくは社会サービス(教育・保健・福祉・環境および文化)を提供することで「地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的」を追求する企業。労動部が認証しさまざまな支援(費用の融資、公有地の賃貸、公共機関による優先購入、人件費、運営費の助成など)を行う。2010年現在、253団体が認証を受け11,000人が働いている。
  • 脆弱階層~社会的企業法施行令第2条より、所得が全世帯平均の60%以下、高齢者、障がい者、性売買被害者、その他長期失業者など労動部長官が認定した者。

入手資料から
●チャル愛の沿革
  • 2002年
    • 4月 水原希望地域自活センター 市場型自活 勤労豆腐製造事業施行
  • 2003年
    • 3月 (社)私たちの農村を守る運動本部 カトリック教水原教区に豆腐納品
    • 6月 拡張移転 20平米 月25000丁生産規模
    • 7月 京義道 社会福祉共同募金会 企画事業 選定 (工場機能 補強)
    • 9月 チャル愛 事業構想 (未来自活共同体 法案模索)
    • 11月 野宿者 自活事業選定(工場機能 補強)
  • 2004年
    • 1月 チャル愛の目的及び目標設定
      /(社)私たちの農村を守る運動本部 キリスト教ソウル教区へ豆腐納品
    • 2月 仁川地域小学校給食に納品(OEM方式)
    • 7月 チャル愛公式出帆  インターネットカフェ チャル愛会 開設
      チャル愛 経営原則確立
  • 2005年
    • 1月(社)私たちの農村を守る運動本部納品地域拡大(ソウル、仁川、水原、清州)
    • 3月 水原市自活共同体認定(人件費支援4名/共同体 5名)
    • 5月 水原市 장안区정자 洞 私たちの農産物売店 オープン
    • 12月 水原市 장안区정자 洞 純豆腐工場 オープン
  • 2006年
    • 1月 완전自立共同体 形成(一般1名:次常務 3名 ;受給者 5名)
    • 6月 非営利法人 創団大会
    • 11月 安山市ボンオ洞 私たちの農産物売店オープン
      京義道広域自活共同体認証
  • 2007年
    • 4月 京義道 国民基礎生活保障基金 貸出支援によって ヨンファ洞に現工場を拡張移転
      工場拡張とあわせて小規模(家内手工業)形態から中小企業型への転換を模索し、一般市場進出の為の 교두보 確保
    • 11月 アニャン地域自活センター 私たちの農産物物流事業チーム新設
      チャル愛 支店設置
  • 2008年
    • 1月 視話労働者の家 地域自活センター 私たちの農産物物流事業チーム 支店設置
      (チャル愛 物流地域(安山支店) 、安山支店から移管 株式会社チャル愛へ転換
    • 4月社会的企業 認証(労働部)
  • 2009年
    • 3月 無消泡剤・無乳化剤・無化学凝固剤
      100%国内産大豆、純豆腐出資

地域教育訓練センター(Regional Opleidingen Centrum = ROC)

2011年海外調査11月【オランダ】②

訪問日:2011年11月7日、13:00~15:00 訪問場所:Frijlemaborg 141 Amsterdam 1102 CV Amsterdam 担当者:Mr.Johan de Jong (member central supporting staff) 社会的包摂のテーマ担当 Mr Dirk Huiberts (member central supporting staff)


 ●概要 ROC(地域職業教育センター)とは、職業・専門的な後期中等教育とともに成人一般教育、成人職業教育を行う、地域密着型の教育機関。社会生活および個人生活を充実させることを目的に、第2言語としてのオランダ語のコースを成人一般教育の一環として提供している。オランダ人の中等、高等職業訓練学校であるだけでなく、移民がオランダ永住権を取得する際義務付けられている、オランダ市民化コースもここで実施されてる。 ROCは民間機関であるが、オランダの公的な教育体系の下にあり、地方と国家行政からの財源で運営されている。ROCはイギリスの上級教育カレッジ、アメリカのコミュニティ・カレッジにあたります。アムステルダムとフレヴォラントで66カ所の校舎で32,454人が学んでおり、中等職業教育(MBO)の8%を占めていている。2,780人のフルタイムスタッフが働いている。

 ●設立の経緯・背景 オランダは、多くの移民を入れ、社会参加を掛け声にギルド(徒弟制度)主体から公の教育機関主体の人員参加の職業教育を推し進めてきた。国際競争が激化していた1996年、職業教育法 (WEB : Law and Vocational Education) が導入され、幅広い実践的な国民教育がスタートした。対象は、特に層の厚い中等職業教育 (MBO : Secondary Vocational Education) で国内70カ所で実施している地域職業教育センター (ROC : Regional Education Centre) はその最も大きい職業教育実施機関である。 ※「職業教育と教育に関する法(WEB)」 1996年1月1日に実施された職業教育と教育に関する法(WEB)は、従来までの様々な種類の二次的な職業教育と成人教育を一本化し、初期職業教育と訓練、またその後の教育と訓練を一般教育とは別に強化し浸透させることを目的にした。これまでの数々の小規模の教育訓練を統合し、大きな地域ごとに集積したことは、職業教育システム上で大きな意味を持つ。また、この法律で国内の統一された資格システムが確立したことも大きな意味を持つ。 

●オランダの職業教育 ※全体的説明はノバ・カレッジでの説明と重なるので割愛 オランダでは12歳の時点で進路選択があり、職業教育におよそ60%、一般教育に40%がすすみ、ヨーロッパでも早い決断が迫られる。VMBO(中等職業準備教育)から一般教育への進学は難しいが、逆への移行は簡単である。MBOは労働市場への労働力の主要な供給機関であり、経済の基礎、社会の支柱と見なされている。オランダの労働人口のおよそ40%が職業コースを少なくとも第2の職業訓練レベルまでをやり遂げている。 現在、630,000人の学生がMBOで教育や訓練に参加しており、その内485,000人が正規の職業教育コースに在籍している。残りは成人教育プログラムに参加している。政府はこの部門に毎年2,60億ユーロ-を投資しており、その額は教育総予算のおよそ12%を占めている。 

●ROCのコースと職業資格 ビジネス、コミュニケーション、社会福祉・健康ケア、スポーツ、技術、ホテル・ケータリング・レストラン研究、旅行、パン・菓子、航空整備、ファッションと美容、その他成人教育、準職業訓練コースがある。それぞれに4段階のレベルに分類されており、レベル2以上が職業資格となる。ROCにおけるその比率は以下のようになっている。 レベル1 資格なし    3.8% レベル2 最低の資格   25.7% レベル3 スペシャリスト 26.2% レベル4 高等教育に接続 44.3% セントラルヒーティングの管理者や大工さんのような技術職と介護職は労働力不足でレベル2からでも仕事がある。 フルタイムで職業訓練を受講する学生の他、パートタイムの学生は有給で働いていて、その労働は専門科目の実習としてカウントされ教育課程に組み込まれている。また、学校基本コースでは学習期間の20%から60%が実習に当てられ、仕事基本コースでは学習期間の60%以上が実習に当てられている。

 ●社会的包摂政策 移民グループへの特別な教育はないが、オランダ人との間には教育チャンスに大きな違いがある。オランダ人のおよそ70%が一般教育コース(VWO/VWO)に進み30%が職業教育コース(VMBO)に進むが、スリナム人、トルコ人、モロッコ人などの移民グループはその反対の比率である。そして、その職業教育コースから早期に離脱する者も多く、彼らを職業訓練コースへと連れ戻すことが社会的包摂政策として取り組まれている。 ROCの2007から2011年の目標は、毎年学校早期離学者を10%削減し、2011年には2007年以前の40%までに削減することである。その結果、2005-06年には2890人だったのが2010-11年には1984人で31.3%削減することができた。 ここでは厳しさと保護の両面からの社会的包摂政策が行われているが、早期離学者を組み伏せるために、学校を休むすべての学生は地方当局に報告され担当役人から厳しく指導を受ける。移民の者の帰国時に子どもも同行させる親も罰せられることになる。一方では、学生の3分の1は学業を続けることは加重負担であり、コーチを増員して学習の進展や、将来不安や家族問題への援助やケアをすすめている。