2012年12月18日火曜日

一緒に歩く子どもたち walking with us



NO.

訪問先名称
一緒に歩く子どもたち walking with us
訪問日時
20121025日  10001330
場所
( 駅 徒歩 分)
先方担当者
氏名 Her In Young     (肩書き 代表  )
先方連絡先
所在地:
#801,23,Seocho-daero 74-gil,Seocho-gu,Seoul,137-923,Korea
電話番号:82-2-522-7935
メールアドレス:1224tree@hanmail.net
訪問者
岩本・宮本・白水・新谷・津富・佐藤・山本・畑山・白谷(記録)・姜乃榮(通訳)

■入手資料等
英語のリーフレット
韓国語のパンフレット
(当日、事務長から全員に向けて配布された)

■参考URL等
http://www.withu.or.kr/ 一緒に歩く子どもたち
■その他参考資料等

【概要】
Walking with us「一緒に歩く子どもたち」はすべての子どもたちは経済的な事情や、社会的に背景にかかわらず、子供たちのもつ潜在能力を最大限に発揮するために、平等な機会を与えられるべきであるという価値観のもと、2010年に設立された社会福祉法人。


【目的】
Mission ミッション〉
Support children who need special care and support in our society
[社会の中で、特別なケアやサポートを必要とする子供たちを支援する]
Provide them total solutions in education, culuture, emotional support
[彼らに教育、文化、心理的なサポートにおいて包括的な解決策を提供する]
Eventually help children grow into productive members of our society
[つまり、子どもたちが私たちの社会の活動的な一員と育つよう、助ける]

Core Values 価値観
All children must be afforded equal opportunities to exert their full potential ,regardless of their economical and social backgrounds
[すべての子どもたちは経済的な事情や、社会的に背景にかかわらず、子供たちのもつ潜在能力を最大限に発揮するために、平等な機会を与えられるべきである]


【組織・運営】
7名の理事会 7名の職員(6名は正社員・1名はインターン)から組織される。
韓国タイヤという大企業の娘が理事をしており、彼女がすべての資金を提供している。
年間20億ウォン

【施設・設備】

【プログラム】
Music Programs: Allkidstra
[音楽プログラム オールキッズストラ]

事業目的
貧困層の子どもたちは音楽を学びたいと思っても、学ぶことが難しい。
音楽は子どもたちの心を癒し、また演奏することができるようになると自己肯定感も生まれる。
自分を肯定してくれる経験が少なく、文化的に疎外された地域の子どもたちにとって、楽器を演奏するということは、「人生の幸せな経験」になることを目的とする。

事業対象
楽器演奏とグァンアクダン活動に関心があり、音楽教育の機会を持たなかった児童、青少年

事業内容
音楽教育に必要な機器の提供
専門レッスン講師のサポート、個人やグループレッスン進行
基礎理論教育
ウインドオーケストラ、ジャズビッグバンドの活動セクションの機会提供
アンサンブルの練習プログラム、合奏進行
公演の演奏の機会提供
音楽キャンプ、定期演奏会開催
文化芸術公演観覧

※地域社会を基盤とし、 "児童青少年グァンアクダン"Community Youth Wind Orchestra)を運営。ソウル恩平、京畿道安養、軍浦、金浦(キンポ)3つの地域で150人余りが活動

事業における特徴
○地域社会に基づいた "町内グァンアクダン"
1つのグァンアクダンを運営事務局から直接管理·運営する方式ではなく、 "地域社会+事務局+講師"の枠組みを持って、各地域ごとに地域の名前を生かして、地域の特性に合わせて、地域が直接運営に参加する "町内グァンアクダン "の方式をとっている。

○草の根運営方式
各地域の団体のネットワークをベースとし、1人の音楽監督ではなく、若くて有能な複数の講師の協力のもと行われる。このため、一緒に落ち着いた状態で、上手になることができる。そのため、各町内グァンアクダンの特性に合ったモデルが開発される。

○様々な年齢層が参加
小学生〜高校生まで、幅広い年齢層が参加して開始年度別で運営される。1期の先輩たちが後輩の23期を教え、各パートごと、班長があり、メンターの役割をしてくれてお互いに成長できる。

質疑

―楽器はどこに保管するのか?
楽器は子どもにあげてしまうので、どこかで保管している、ということはない。


Learning Programs: allkidstudy
[学ぶプログラム オールキッズスタディー]

事業目的
公教育が本来の役割を喪失し、教育のかなりの部分を私教育に頼っている。そんな中で、韓国では、基礎的な学習ができない子どもは全体のなかで30%もいる。そのなかでも1%~3%の子どもたちは、ハングルが読めなかったり、足し算や引き算さえもできない。特に貧困層の子どもたちは保護者から放任されることも多く、学習不振になりやすい。受験に合格するための塾のようなものではなく、基礎的な学習ができるようになることを目指し、出発段階での不平等を最小限に抑えることを目的としている。

事業内容
読み書き計算を中心とした基礎学習を1:1で週23時間の指導
韓国教育課程評価院が開発した教材を使用:体系的な診断 - 学習 - 評価のプログラム
子どもたちたちが苦しんでいる様々な問題へのアプローチ

事業対象
地域児童センター、グループホームなどの児童福祉施設や学校を通じて広報·募集して
診断テストを実施し、該当する子どもを選定

事業における特徴
○講師は経歴断絶女性が中心
結婚や妊娠をして職場をやめた女性など、キャリアが断絶されて再就職ができない女性に、コンテンツを教えて、各学校や機関に送っている。子供達にとって、講師は親のような存在である。

質疑

―講師が経歴断絶女性であることの理由は?
彼女たちの雇用にもつながるし、女の人のほうが子供と接することは上手である。また、子育てを経験してきた女性が多いのでなおさらである。

―講師に大学生のボランティアなどはいないのか?
いない。大学生のボランティアだと、専門性もなく、持続性もないから。

30%以上の子どもがハングルを読めない書けないという現実に対して、学校が地域センターに依頼してくるということは学校側は教育放棄しているようにも見えるが?
学校側には余力がない。勉強ができる子どものみに教える。韓国では、小学校の入学時点で読み書き計算ができる段階で入学してくるのが前提となっている。


Children in Crisis Support Programs: EXIT
[子供への緊急支援 出口] 

事業背景・概要
韓国には家庭内暴力や放置などが原因で路上生活者となった青少年が多く存在する。活動家のあいだでは、10万人以上いると推定される。
シェルター(避難所)という場所があるが、韓国には92箇所しかなく、そうした青少年の1割ほどの受け皿にしかなっていない。
残りの9割は性売買をすることで生活している。青少年たちにとってお金を稼ぐための選択肢はほとんどないのだ。18歳未満のラブホテルの使用はできないが、33%はラブホテルで21%は家で性売買が行われている。
路上で生活する子供たちを家庭へ戻そうとするのが福祉であるが、walking with usでは、子供たちはどこにいても主体的でなければならないと考えている。路上は単なる路上ではなくて教育や、交流の場となる。子供たちがシェルターに行くまでの支援だとも考えている。このEXITはバスである。青年たちが行きそうなエリアに行っている。その中で子どもたちはご飯を食べたり、ゲームをしたり、眠ったり、音楽を聴いたり、自由に行動している。

事業対象
路上で生活する青少年たち。
自分から来る青年たちもいるが、あまり多くない。バスに来る子どもたちに、友達も連れておいで、と声をかけるようにしている。
また、居酒屋やラブホテルに声をかけて、未成年が来たら知らせるようにお願いしたりしている。
スタンプカードを作成し、EXITに来たらスタンプを貯められ、集まると食事の無料券がもらえる仕組みを作り、子どもたちが来られるような仕組みを作っている。
居酒屋などにEXITの存在を知らせるチラシを置かせてもらったりしている。

事業内容
○家出青少年一人一人に街中で必要な教育(自立、教育、性教育、就業教育など)を実施して自立の助けとする
・路上生活に役に立つような物品(石鹸やシャンプーやリンス・薬・コンドーム)をバックに入れて配布
EXITにくる青年たちを健康診断に連れて行ったりもしている。
飲酒や喫煙などのため、健康問題を抱える青年たちも多くいた。性売買をしているため、性病にかかっている青年もいた。

○夜の時間で起こりうる危機的な状況に備えて、緊急救助サービスの提供(食べ物、危機介入、医療支援など)
ずっと食べ物を口に出来ていなかった青少年の中には来た途端にカップラーメンを何杯も食べた青年もいた。

○家出青少年を支援する活動家(大人活動家、ピア活動家)を組織し、地域内の資源を接続して、社会的セーフティネットの構築
・活動家は夜7時から明け方2時まで活動する。その後情報共有をするので解散するのは朝6時。大変危険を伴うものなので、事前に30時間の教育を受け、2000ウォン渡して、1晩路上生活を経験する。活動は必ず2名のペアで行動する。安全問題はとても重要なため、徹底されている。保険にも加入。

○家出青少年の実態について調査研究し、既存の家出青少年支援活動と組織に関する情報を収集し、ネットワークを進める

質疑
―ハジャにも似たような緊急バスはなかったか?
政府が運営するバスが4台ある。政府は実績を作ればいいと思っているので、質はどうかはわからない。一時的な施設やバスをもっと増やしていくことが大切。

―このような緊急バスの取り組みはほかにもあるが?
ソウルでホームレス対象の緊急バスがあったり、ほかの地域ではほかの支援団体が活動している。
私たちは現代自動車から、バスを寄付してもらった。バスのデザインも有名なデザイナーがデザインを寄付してくれた。私たちは寄付をお願いするとき、「動く宣伝広告だ」とお願いしている。

―ピルの服薬指導などはしない?
避妊する方法は教えるが、青少年たちは避妊器具を使用しないことが多い。なぜなら、売春の値段が、避妊するときとしないときとで約2万ウォンの差があるからである。
家出青少年の中ではいいおじさん、と悪いおじさんがいる。良いおじさんは売春行為はせず、ドライブなどに連れて行ってくれる。悪いおじさんは売春行為しかしない。
性を買う立場のおじさんたちは本当に毎日来るので、一番青少年たちのことを理解している。

―警察などは機能していないのか?
交番も近くにあるが、処罰はしてくれない。電気を貸してくれるぐらい。警察は透明人間。

―シェルターは足りているのか?
圧倒的に足りていない。路上生活を送る青年たちの1割ほどしかカバーできていないから。しかし、青年たちも路上生活が長くなると、シェルターに入るのを嫌がる。シェルターには規則があるから。

―一定の時間になると、青年たちは街を徘徊してはならないなどの条例はあるかと思うが、路上生活を支援するこの活動は警察ともめたりしないのか?渋谷でこういう活動ができるか、と考えると想像ができない。
韓国では警察は透明人間。なにもしてくれない。

【全体的な質疑】
―この社会福祉法人はどのように収益をあげているのか?
1人の理事から、この活動は始まったのだが彼女は韓国タイヤという大企業の娘で彼女の寄付を受けてこの活動は成り立っている。本当は理事ではなく、理事長になれるのだが、彼女は表に出ることを嫌って、お金を出資していることも表に出さない。このようなCSRの場合、会社名や自分の名前を大げさに売るし、自分が実務者となることが多い。お金を持っている人たちはお金を使うことに努力をする。私たちの役目は彼女のようなお金持ちのお金を有効に使って社会に還元することである。

【感想・考察】
韓国の教育格差は深刻である。親がどういうひとなのか―収入やバックグラウンドで、子どもたちの受けられる教育や子どもたちを取り巻く環境は全く異なる。韓国の場合は児童・青少年のための福祉制度がまだ十分ではなくその格差が日本より激しいようにも見えた。この状況下で、この社会福祉法人「一緒に歩く子どもたち」の手厚く長期的なサポートはとても素晴らしものだと感じた。
まず、音楽サポート。楽器を演奏できるようになる、ということは、貧困層の子どもたちにとってはかけがえのない自信につながる。また、オーケストラという集団の仕組みを作ることは、協調性や社会性を身につけることができる。楽器を子どもたちにプレゼントしてしまう、というのは大胆で画期的であると感じた。
次に学習支援。学校側が読み書き計算ができない子どもたちに対してカバーできていない、という現実に驚いた。講師を経歴断絶女性を迎えることで、子どもたちにとっても、女性側にとっても有益になるとてもいい方法である、と感じた。
緊急バスの取り組み。家出青少年の問題が韓国では大きな問題となっている中で、家出青少年たちを家に返すという取り組みではなく、その前段階として路上生活をしている子どもたちにとっての居場所となるような支援は、とても素晴らしいと感じた。が、この支援は大変難しく危険が伴う。安全性の確保は大きな問題であると感じた。また、この取り組みについては日本で行おうとすると、様々な問題が生じるのではないかと感じた。青少年の深夜徘徊についてはいくつもの条例がある。ある意味で深夜徘徊を支援しているこの取り組みは警察ともめるだろうし、世間からのバッシングもあるのではないかと感じた。
企業のCSRは、大変有効な活動である。しかし、支援が短期的であったり、企業の売名活動の場合も多い。この「一緒に歩く子どもたち」を支援する企業は、長期的な支援を可能としている。行政や、社会的企業のようなビジネスで支援を行うものではカバーしきれないことを、この「一緒に歩く子どもたち」は実行している。この取り組みが長期的に継続し、このような長期的なCSRを可能とする企業がさらに増えていくとよいと感じた。