2012年12月18日火曜日

孔陵(コンヌン)青少年文化情報センター


NO.

訪問先名称
孔陵(コンヌン)青少年文化情報センター
訪問日時
20121024日 14001600
場所
ソウル市原区(ノウォング)孔陵2875
( 駅 徒歩 分)
先方担当者
氏名 イ・スンフン   스훈
   (肩書き 所長     )
先方連絡先
所在地:ソウル市原区(ノウォング)孔陵2875
電話番号:02973-1318
メールアドレス:

訪問者
宮本みち子、佐藤 洋作、津富宏、白水崇真子、岩本真実、新谷 周平、畑山 麗衣 、白谷 素子、山本耕平(記録)
入手資料等


参考URL

その他参考資料
 

【概要】
蘆原区は、ソウル特別市の東北部に位置し東西6キロ、南北9キロでやや細長い形状をしている。このセンターが位置しているコンヌンは、そのなかでも、さらに東隅に位置している。こうした同地域の地理的な条件は、住民に、自己の住む町がソウル市のなかでも排除された町であるという思いを持たせていた。
同青少年センターの屋上からは、林立するマンション群が見える。コンヌン1区と2区には計9万人が生活している。その3割が若者である。この地域に若い層が多いことや大学4校あることからも、若者や住民が夢をみることができる町づくりを行いたいとの思いが、この青少年センターの活動の基盤にある。
6階建てビルの青少年センターの1階は市民に開放された図書館である。それぞれのフロアーはさほど広くないが地域の文化を育てる若者達の活動拠点としての様相を持っている。
 青少年センターに入る前に、坂の中腹にあるコンクリート塀に青少年が描いた絵画があった。センター長は、この絵をさし示しながら、町を青少年と住民で描いた絵でいっぱいにする活動について紹介した。センター長は、自身が住み活動する地域に参加する青少年の姿について夢を分かち合う姿であると指摘した。このセンターでみた青少年の姿は、まさに保護される姿ではなく町づくりに参加する姿であった。

【目的と活動】
 この青少年センターは、大韓聖公会が運営するものである。大韓聖公会は、韓国における教育や福祉(なかでも代案教育やホームレス支援等)を熱心に行う組織である。大韓聖公会のミッションは、キリスト教精神による「開かれた心」「分かち合い」「奉仕」を基礎とし主体的な人間の育成、分かち合いを実践する共同体的な人間の育成を目指す。この為、大韓聖公会が関わる組織では、人文学の学習や普及を徹底する。韓国では、2006年にソウル大と高麗大、延世大、梨花女大の学長らが「人文学の危機」を宣言したように人文学(哲学、歴史学、文学等々)が重視されているのである。このセンターの1階に住民と対象とする図書館があり、さらに青少年図書館には青少年図書司書が配置されている。これは、学びを生活の力にする人文学を重視する実践のなかでは当然のことかもしれない。
 さらに、何よりも興味深い3つのキーワードがあった。それは「青少年町活動家」「夢分かち合い」「排除と主体」である。「青少年町活動家」、町を汚し町の住民から嫌われる青少年が、町の住民から尊敬される存在になる。このセンターで目指している青少年町活動家育ては、彼ら自身が自己尊厳を高めることができる重要な手段ではなかろうか。「夢分かち合い」、そもそも競争主義の下で夢は個人的なものになっているのではなかろうか。自身の夢、町の夢を分かち合う実践は、夢の個人化との戦いであろう。「排除と主体」、今、自分達が住む町を自分たちの力で創り上げ、かつて持っていた居住地の条件から生じた排除感を克服し、ソウルあるいは韓国社会に主体的に参加する町・人として育っていくことがここの実践では目指されているのではなかろうか。

【組織・運営】
 当センターのスタッフの中は、100名ほどいる町の青少年の町の活動家(この町の活動家は、例えば学校暴力の問題や自転車泥棒の問題に関するサークルをつくり活動している)のコーチィグを担当しているものや不登校問題の相談や支援を担当する者、相談を担当する者やユースカフェや図書館を担当する者等々と16名で構成されている。
 センタースタッフとセンターは、住民が排除感をもっている地域に出て、その地域を学ぶなかで「町が学校になる」との実感を持った。コンヌンとは、お母さんに子どもがまかされているという意味であり、学校と梨の畑、国家選手村に囲まれている町である。この町で行っていることは、青少年が主体となる活動である。韓国の教育事情は、教室が創造力をおさえ暗記を重視する環境になっている為、青少年が主体になることは困難であると考えたセンターは、感性のワークショップを大切にした。さらに、有名な漫画家や青少年相談家をこのワークショップに呼んだ。このワークショップを終了し、いくつかの提案が生じた。その提案の一つは、町の遊び場をきれいにしている青少年やあまりにも汚い橋の下に壁画を描いている青少年もいる。さらに、青少年が行くことができる遊び文化地図を創る青少年も生じた。青少年は、自分達が必要と考える活動に関しポスターを作成し宣伝し、その賛同者を集める。その活動の中では、自分たちの町に多い自転車泥棒の解決の為に日本とデンマークの自転車に関する政策を検討し報告した者もいる。彼らは、自分たちの検討した結果から政策を提案し、住民の賛同署名を集め口調に政策提案を行った。
 この青少年センターの活動の特徴を、町の生活要求を把握し解決する為に、青少年と住民が共に主体的にその生活要求を実現する方法を考え行動する為の教育と、青少年や住民と教育機関や行政とのコンサルテーションに求めることができるのではなかろうか。コンサルテーションは、社会福祉実践のなかで、関係する諸機関や人を有効に結び付ける取組である。この町を夢に溢れた町にし、この町で夢を追及する為に青少年と大人を、青少年と行政機関を、青少年と行政を結び付ける核としての機能を、この青少年センターが果たそうとしている。
 

【プログラム】
「私も花」という空間があった。この空間では、夢を語りあい、夢を分かち合う実践(プログラム)が展開されていた。これは、今、この国でいきることを肯定的に捉える取り組みであると捉えていいのではなかろうか。夢を語り合い、年1回の青少年町活動家大会に取り組む実践にみるのも、町を若者の力で創りあげようとするエネルギーを感じるものであった。
 若者が集い、カラオケや漫画、ビデオを楽しみ空間がセンター内にある。韓国では、我が国の漫画や劇画さらにはアニメで日本語を習得する韓国の若者と出会うことがある。このセンターに置かれていたビデオのなかにも、我が国で代表的なアニメ作品があった。若者(なかでも青少年)が集うのは、放課後の時間である。競争の激しい韓国において放課後の時間をどれだけ地域の仲間と過ごすことができるのか疑問があるが、ここでは、今後木工製作の作業場も整備する予定とのことであった。
 このセンターには、いくつかのプログラム室があった。そのプログラムの一つに小学校3年生から6年生が参加する町づくりのプログラムがあるが,このプログラムを運営するのは町の住民たちとのことであった。また、相談室もあり、そこでは「前向きな自分になる」ことを目指した相談もある。さらに青少年図書館には青少年図書司書が配備されている。この図書館には、13-18図書(13歳から18歳向けの図書)が所蔵されており、利用は誰でも可能である。見学当日には、午前中に地域の障害者施設が、センターを利用した為、図書館ではダウン症等の知的障害のある青少年が読書に耽っていた。
 センターの最上階には、「韓国の現実」と表現される状況があった。各自のペースを板で区切った勉強スペースがあり、当日は大学生が懸命に勉強していた。このセンターの地域内には4つの大学があり、その大学に通う若者やこの地域に住む若者達がこの空間で勉強しているのである。ここに、韓国の大学生が卒業後の進路選択にと向き合う姿をみることができるのではなかろうか。彼らは、朝7時から夜11時まで、この場所で普通に勉強し、月1回だけ休んでいるとのことであった。
 ここで展開されている多様なプログラムは、青少年の発達を保障する観点から展開されているものと、青少年問題の予防的観点から展開されているもの、さらには切実は社会適応への要求に応えるものが混在している感を受けた。
【質疑】

Q:いわゆる青少年センターと青少年支援センターの違いを整理して欲しいのですが?
A:これからは統合されると思うんですけども、青少年センターは市右辺施設として位置付けられている。法的には文化の家という名付けになっている。だから青少年たちのサークル活動の増進を増進する。青少年支援センターは福祉系です。
Q:彼らの一時的な保護は青少年支援センターが行いますが、ここでは全くないのですか?
A;そうです。ここは一時的な保護はまったくない。相談室はある。
Q:相談室で保護が必要だなという事例は?
A;もちろんあります。もし家庭でできる子は経済的な支援をするし、もしもっと深刻な問題の場合はノウンにもネットワークがありシェルターも総合支援センターもあります。
Q;青少年相談センターは?
A;ノウンの青少年すいれんかん(?)とのネットワークがある。
Q:壁に色を塗るプロジェクトの中心となっている女性は何歳?(NEWSを見て)
A:高校1・2年生
Q:まちの活動家と紹介してくれた人・・・世の中のまちの夢を考える。そこからサークルがうまれる。
A:講座が終わると1枚の事業計画をだす。
Q:どうやって来てもらう?
A:韓国では中学でも高校でもボランティアを20時間以上しないといけない決まりがある。ボランティアを使うようにしてセンターにくる。最初はその制度を使って来るが、その後は自発的に来る。
Q:全国的にこういった活動はしている?
A:このセンターの活動で韓国の中でも珍しく、注目されている。
Q:イギリスとの活動にている。
違うタイプであちこちにひろがっているが。
Q:彼にそういった問題意識があったのですか?
A:プサンが活動をしていて2年をかけて・・・学部は教育学部にはいっていた。学院は社会学部
Q:もう1点:ソリアン・ピアカウンセリングは
A:高校3年生と10名のピア相談者を育てたました。有益な活動だと思います。すごく興味があります。