2007年度海外調査(フィンランド) [NO.6]
訪問日時:2007/11/22
場所: 00621 Helsinki,Finland VATES 財団本部
1993年設立。私立。全国35団体の組織。スタッフは15人。 結 成するまで各団体は障害者の就職斡旋等を行っていたが、不況からの回復(失業率の解消)は、障害者にとっては就労が困難になると考え、各団体がネットワー クを組み、より強い影響力のある団体へ成長させた。
これは世界的にみても珍しいケース(フィンランド式)で、諸外国の同種の団体で協力体制はみられず、逆に競争になっているケースも多い。 VATES式でやれば、雇用対策に動いても、同時期の対策となるため競争にはならない。
VATESでは、直接雇用先の開拓をするなどの活 動 は 一 切 行わず、各団体の活動を発展させるための活動のみに注力。
具体的には、第1セクターと第2セクターの間を取りもったり、現場と全 国の ネッ ト ワーク 機能を高めるような活動。
4つのネットワークがあり、100の団体と協力関係にある。
各団体では、活動を通して 精神的 リハビ リを 行ってお り、精神障害者の就職率がアップしている。
これまでの障害者むけ労働センターではなく、一般労働市場へと拡大し た
(障 害 者向け でない)普 通の職場へ就職させる時、私立企業との協力が重要になった
◆ Finse Network
一 般市場への 就職 のための 組織
◆ Sofi
10年前に社会的企業を発展させるた めに設立した組織
◆ Workability International
20 年前に発足させた世 界 最大の障害者雇用促進ネットワーク
ヨーロッパとアジアエリアに分かれていて、設立者が3人。
その内の一人が VATES会長の Mariettaさん。
2008年9月世界大会が札幌で開催予定
Social enterprise(以下SE)の説明 Jarmo Kujanpaa氏担当
【フィンランドにおける社会的雇用セクター(中間的市場)の全体図(2003)】
The volume of social employment sector in Finland(31.12.2003)
フィンランドには 2007年現在130 のSEがある。2007年末までには140~150になる。
トータルで 600人の労働者がおり、彼らの半分はハンディを抱える人々。
ほ と んどは小規模企業(2~50人規模)
大企業も困難者を雇用してい るが、全労働者の3割以上の困難者を雇用することは無理。
法人形態 は 問わ ない。SEになるために必要な条件は以下の二つ。
① 雇用者の30%以上が社会的ハンディを抱える人(就労困難者)であること
② 利益を生み出す業態であること
就労困難者かどうかは労 働省が判定する(例:障害者、長期失業者、アルコール中毒、服役を終えた人など)
② にこだわるのは、利益を生まなければSEのミッション(利益を生み、労働者に就労のスキルを身につけさせ、給与を払う)は果たせないと考えるから。cf: 障害者労働センター
業務内容は様々。車の修理、家庭の清掃業、広告会社など。フィンランドの労働市場の縮図。
400ある自治体のう ち 290で雇用。全体の7割。顧客は 13110人 い る。
ワークショップ 障害者は13000人、若者400人、長期失業者5000人 計23000人
フィンランドの SEは障害者が自 分で職 場を作っている、世界的にも珍しいのではSEの設立経緯、主体は様々
①個人が企業を立ち 上 げる
②企業が就労困難者を雇い、SEに登録する
③第3セクター(財団や連 盟)がつくる
④自治体が設立する
ほとんどは株式。ワーカーズコレクティブのような組合、財団や協会のような法人(失業者協会)、個 人 事 業 主など。
社会的企業 (Social enterprise)の規定は世界で違いがあるので、国際比較は難しい
例)イギリスはSEが5.5万、Social firmが400といわれている
イギリスは社会的サービスと受ける顧客が社会的ハンディをもつ人(例えば高齢者)であればSocial enterpriseと呼ぶ。
フィンランドのSocial enterpriseはイギリスのSocial firmに近い。フィンランドで140、イギリスで400なら数的にも近くなる。
職業的リハビリが必要な人とは:障 害者とワヤウント(障害者以外で一般就労を可能にする健 康・能力を満たさない人=労働省が定義した概 念)
【SE の労働省認定について】
基礎となる法律:社会 的 企業法(2004年制定) http://www.sosiaalinenyritys.fi/sofi_english
① 労働者に最低賃金以上の給与を払うこと
② 30%以上の労働者が就労困難者であること
【2007年に改 正】
EUの法律が基礎となって2007年に改正され、労働者割合だ け でなく以下が追加
③ 企業活動に「社会的意義」があること
現在、補助金を大きく上回る利益を上げても国へ返還する義務がない。世界 的 にも 例がない。今後どうすべきか議論中。企業間の自由競争がなくなるから税金優遇等はないが、給与補助がある。
【SEの給与補助に つい て】
① 給与保障
給与コストの50%を保障、最大1300ユーロ/1ヶ月
Amout:514~976ユーロが支払われて いる
期 間:1~3年
例)企業からの支払い2000ユーロ(給与)
+600ユーロ(社会保障費=給与の3割程度)
2600 ユーロ ← この企業負担の50%を国が保障
-1300ユーロ
1300ユーロ ← 実質の企業負担額
※ ほとんどの労働者の給与は1200~1500ユーロ/1ヶ月位
② 環境改善援助
週労困難者を雇い入れる時の職場の環境改善費は最大 2500ユーロまで全額援助
例)車椅子のスタッフのための机など
③ 起業援助
労働政策手当てとして、SE起業時のスタートアップ 支援
全体の75%までOK 項目に規制なし
【SEがもたらすWin-win-winの関係】(Jarmo Kujanpaa氏の私見との前置きあり)
◆社会にとって
失業手当よりSEへの援助の方が、福祉コストが削減できる(働くことで健康にな れる)
◆企業にとって
労働力不足の解消
給与の援助金を獲得できる
企業イメージがアップする
◆個人にとって
収 入がアップする(失業保険や生活保護より)
社会的生活が営める
職業能力、スキルがアップする
Q)ソーシャルエンタープライ ズ に つ いて。給与補助が出る3年が切れたらどうするのか
A)障害者であれば半永久的に受けることができる。長期失業者は就労することで困難 者で はな くな るので支援期間が終われば切れる。(トレーニング/リハビリ期間的位置づけ)
300人中250人は障害者と特別ニーズを持つ人 (ワヤ ウン ト)で、 50人が長期失業者であり彼らは通常の労働者となっていく。
参考URL:www.vates.fiwww.sosiaalinenyritys.fi