2010年10月22日金曜日

Youth-wise Detached Project

2007年度海外調査(イギリス) [NO.5]     


訪問先名称:Youth-wise Detached Project
訪問日時:2007年11月28日 18時~20時


*【概要】*
オフィスは、地域のユースセンター(コミュニティセンターが一体になった場所?)の一角にある。あとで話を聞いてわかったが、彼らはvoluntary組織だが、ここは市のユースサービスのオフィスと同居しているのだという。同じ部屋の彼らの机スペースの隣には、シティカウンシルのユースワーカーたちの机スペースもあった。この日は、NickとBerdyが話を聞かせてくれた。二人とも20代後半から30代という感じ?この二人以外にあと、たぶん20代前半ぐらいのより若いスタッフが二人いて、彼らは私たちと入れ違いに、夕方の街に出かけて行った。YouthWiseというイニシアル入りのトレーナを来て、腕章のようなものを付けていた。
ここは独立したチャリティ団体で、市からも少しは資金を得ている。若者たちとは先生でも大人でも警官でもない、平等な大人としての関係を築こうとしている。それはプロフェッショナルな関係という意味でもある。


*【歴史・経過】*
ここは1985年にできた。が、決まった収入がないので、途中で予算が来なくなったこともある。当初はデタッチドワークをやっていたが、プロジェクト的活動を始めるようになったら、そちらに予算が来ることもあり、当初の活動ができなくなっていた。そこでプロジェクトも終わりに近づき、次の予算の目処が立たなくなったとき、もう一度自分たちの活動を見直すために、2006年9月から2007年3月までここを閉じることにした。
その後、あらたな予算としてneighborhood renewed fundを申請して、あらたなスタッフを募集し、07年4月からあらためて当初のデタッチドワークの活動に戻って再スタートを切った。いまはようやく組織が安定してきたところ。Berdyだけが当初からのメンバーで、あとはみなあらたなメンバー。4月からで延べ600人ぐらいとコンタクトをもっている。実数でいえば100人ぐらいか。そのうち深く関わった人が30人ぐらい。
85年前後にこの組織を立ち上げた経過は、当時この地域に4つのユースセンターがあったが、若者たちは寄りつずうろつき回っていた。たむろするだけで暴力をふるったりするわけではなかったが、そういう現状を案じるなかから、まずはうろつき回っている連中に、何が面白くてそうしてるのか?と聞いて回った。そうしたらユースセンターの活動は規則がありすぎる、それより友達と楽しくしていたいとのこと。でも、そうは良いながらも何かをやりたがっていた。犯罪の加害者にも被害者にもなりうるところを、彼らは問題を認識しようとせずに、現状にあきらめているようにみえた。自分たちは、そんな彼らに他のチョイスもありうることを伝えていくことが仕事だった。かつてはアプレンティスシップに入って、そこでいろんな年代と関わることができたが、いまは同年代としかつきあう機会がないので、ソーシャル・スキルを養う機会が乏しい。


*【活動スタイル・性格】*
活動の基本は、彼ら当事者が関心あることをやること。それが結果的には何かの学習経験になることもある。ただぶらぶらしているよりいい。主な活動はここのユースセンターなどで行うが、休暇中は課外活動に連れて行くこともある。自分たちの活動は、disadvanttagedな若者とこうしたユースセンターを結びつける仕事ともいえる。
乗馬に関心ある人を集めて一週間ぐらいのプログラムをつくったりしているが、そういった活動はいわば「エサ」みたいなもので、それを通じて当人が抱えている問題を解決していくことが目的。オートバイに不法に乗っている連中に近づいていって、もっと合法的に楽しもうよと持ちかけて、そこから仕事に繋いでいくということもある。またワーカー自身が個々にもっているスキルをうまく生かしながら、若者と関わることも工夫している。乗馬の好きなワーカーは、それでつながりをつくるなど。
若者に近づいていくときの決まり文句みたいなものは、「やったことがあることで、やりたいことは何か」「やったことがないことで、やってみたいことは何か」というもの。中にはスタッフ自身やったことがないこともあるが、それを一緒にやっていくと自信もついて次に何かやりたいと思うようになる。


*【若者へのアプローチ】*
他の機関への紹介などだが、若者たちが抱えている様々な問題のなかには専門家が必要になる場合もあるが、若者への関わり方としては、明らかに危険になる場合以外は、当事者が求めたり同意した場合に関わるようにしている。どういうサポートが必要かは、若者自身が選ぶもの。
若い人との関係づくりには時間が必要で、ワーカーたちにもトレーニングが必要。仕事の上で難しいのは、信頼関係を打ち立てること。若い人は目が肥えているから、人を見分けられる。自分たちに最初近づいてくるときも「こういうことして、金もらってるのか」とか聞いてくる。そこでいろいろしゃべっている中から関心をもって、ユースワーカーを目指すようになる人もいる。この仕事に就いている人は、概してユースワークの経験があることが多い。


*【スタッフとして】*
こういう仕事に就いたきっかけ・動機としては、Berdyの場合は、若い人たちが頼れる人がおらず、機会を与えられていないことに怒りをおぼえたこと。Nickは、自分が豊かな機会に恵まれて育ってきたために、自分が得た利益を少しは返していきたくて、この仕事に就いたという。
Nickは市の職員として、ここに派遣されている立場。市がお金を出すのでなく、人を出した形。その方が結局お金がかかるものだから。両者の立場を持つことのジレンマについては、市当局のターゲットと民間団体のターゲットがずれるようなことがあると難しいだろう。どちらかを選ばなければならなくなったら、YouthWiseの方を選ぶだろう。ここに来ているのは市の権威を示すためでなく、YouthWiseのために来ているのだから。


*【周辺地域の特性・状況】*
この地域の特徴について、白人中心で、British National Partyも一定の力をもつなど、レイシズムが生まれやすい地域。以前にかなり差別的な状況があって、いったんは地域にいたパキスタン系の人たちなどが出て行った。しかし7~8年前に人種対等のための職員がおかれてから、コミュニティの意識が少し変わってきた。そのなかで、もう一度この地域に戻ってくるパキスタン系の人たちが増えつつあり、そうすると再びその傾向への反感も生まれつつある。もともとあった製造業がなくなり、サービス業が増えているのだが、遠くまで仕事を見つけに行きたがらないために、結果的に失業率が高くなっている。
こうした話をうかがったあと、既に先に街に出ていたスタッフと合流する予定のNickとともに少しだけ周囲を一緒に歩いた。その日は雨模様だったこともあり、Nickがいうには非常に静かな晩で、ほとんど外にいる人には出会わなかったが、夏場などは途中にあった公園と空き地の中間のような場所が、若者たちの格好の夜の遊び場・たまり場になるのだと話していた。


■参考URL等
http://www.bgfl.org/bgfl/44.cfm?zs=n (Birmingham Youth Service)