訪問先名称:Helsinki City Council Youth Service (ヘルシンキ市青年局)
*【ヘルシンキ市の若者支援(Youth Service)】*
* フィンランド人のアイデンティティ:フィンランド語の国名“Suomen Tasavalta”(通称“ Suomi”は湖の国の意味、Finlandはスウェーデン語)
= シンプルな田舎生活(農業生活)をするライフ・スタイルと価値を持つ。
~ これに第2次世界大戦後新しくアメリカの文化が入って、現在の若者の意識が形成されているが、それはよいものではないという意識が残っている。
* ヘルシンキ市ユース・センターの設立
→ 第2次世界大戦で独立を守り、それを維持するのは若者たちであるという考えに基づく。現在のユース・センターの考え方は1960~70年代に形成された。
*【北欧福祉国家社会の“Ethos” = 1960~70年代に形成】
1. 普遍的サービス = 「全ての国民に」福祉サービスを提供
2. 平等
3. 公的セクターがサービスの責任を持つ
~ この精神に立ってヘルシンキ市のYouth Service(具体的にはYouth Centerを中心に展開されているプログラム)は「問題を抱える若者だけでなく全ての若者を」サービスの対象にしている。
*【普遍的サービスとしてのフィンランドの教育】*
* PISA(OECD生徒の学習到達度調査:Programme for International Student Assessment)の結果が示していること。
= 社会における決定の透明性(transparency)
* フィンランドの教育の特質・・・一言で言えば“equality”
= 「全ての人が普遍的で平等な教育を受けられること」
* フィンランドの教育達成はなぜ高いか?
1. 特別な学校がない(特別な人を集めた学校を作らない)
2. 図書館サービス・ネットワークが充実していて読書が盛ん(図書館サービスは公的サービス充実の一環であり、全てが無料である)
(注)OECD調査では1か月に1冊以上図書館から本を借りている生徒の割合が44%で調査国中最高(ちなみに日本は19%で下位の方)
* フィンランドでは若者のほとんどがコンピュータを使っている(15~39歳では95%
以上、全年齢平均でも75%以上:2007年では79%)
*【Equality = 平等性】*
1. 大統領:Tarja Halonen(タルヤ・ハロネン:1943~)はじめ女性が社会の重要なポジションを占める
~ “equality”の具現化
2. 世界で最も早く(ヨーロッパで?)女性の投票権を実現
3. さまざまな委員会で男女の平等がはかられている ~ 2007年ヘルシンキ市議会は、さまざまな政策においてどのように平等がはかられているかを示す義務を決定した。
*【公的な責任】*
○基礎的サービスの一つとしてのYouth Service
~ Youth Center(ヘルシンキ市内に54カ所):市民が熱心に利用している。
Youth Worker(Polytechnic Collegeレベルのトレーニングを受けて資格をとった
ルシンキ市職員)
予算は2415万ユーロ(日本円にして約40億)
○ヘルシンキ市青年局の組織
1. Local Service:ヘルシンキ市を13の地域に分け、その中に4~5のユース・センターを設置・運営 ~ 「若者の声」キャンペーン
2. Centralised Service:福祉青年ワーク(リスクのある若者へのサービス)、文化的な問題へのサービス、NGOに対する支援
3. Administration:人的資源、財政支援、IT、コミュニケーション
*【パートナーシップ】*
《基本的コンセプト》
1. 大きなイベントを通して企業と協力
EX:ヘルシンキ市のパートナーシップ
ⅰ)新聞社(SANOMA):メディアタイムを提供~無料で広告を出せる
ⅱ)スーパーマーケットチェーン(HOK):多額の資金提供
= ヘルシンキ市と企業が協力して、若者に身近な作業を提示して、個人とくに若者の職
業能力開発と就業機会の提供を行う
2. ユース・センターで多様で特別なプログラムを用意して活動を展開する。
3. Activityを作るときには、アウトソーシングではなくパートナーシップ。
《パートナーシップの内容》
1. 国(政府):政府が自治体を尊重しているため自治体は大きな権限があり自立性高い。
EX:ⅰ)個人や企業から徴税可能
ⅱ)全ての自治体が国から資金提供をうけているが(若者政策ではヘルシンキ市は予算の3%が国からの資金)、国からの政策的指示は少ない
○ 国との協力の重要性=新しいプロジェクト(innovation)への援助
~ フィンランドには約400の自治体があり、その若者政策の中でYouth Workerがそれぞれの試みを展開。ただし、自治体間の情報共有などはあまり行われておらず、進んでいない・・・ネットワーク作りで対応“Club of 10”
2. 研究者との協力(Dr.Siuralaは初代のFYRN代表)
3. 市の他部局との協力 ~ とくに教育局、福祉局、健康保健局との協同PJを展開
4. NGOとの協力
5. 国際組織との協力:EU、欧州委員会など ~ 青年の交換制度
6. プライベート・セクターとの協力
= 以前はセクターを分離していたが、現在はPPPの考え方に立っている
○PPP(Public Private Partnership)とは?
1. 民間企業等に公的な仕事を依頼=公的サービスの商品化
2. プライベート・セクターは新しい情報を公的セクターに提供
3. お金が市などの自治体(公的セクター)に入る
*【政策的課題へのチャレンジ】*
1. 社会的不利(社会的資源のない者)の問題
2. 若者の職業生活へのインテグレーション ~ 移民、ロマニーなど
3. インターネットのどこかで消える ~ ユース・ワーカーが何をしているのか把握できなくなる若者
4. 代表的な民主主義システムからの疎外 ~ 政治家などが信用されていない
5. 健康問題:肥満、体調不良、睡眠不安、精神不安定、たばことアルコール摂取(18歳が法的可能年齢、たばこを毎日吸う16歳が30%)
*【積極的市民活動(Active Citizenship)の促進】*
1. 民主主義教育(Democracy education)
EX:若者の参加:2006青年法(Youth Act)第8章に規定
= オープン・フォーラム(Open Forums)、市長のフォーラム(Mayor’s Forum)、学校
評議会(School Councils)、ユースセンター委員会(Youth Centre committees)、Local Action Group
2. 若者支援組織(Support to youth organizations)
~ ヘルシンキでは約400の青年支援NPOが活動している
EX:今日(11月22日)のニュース・トピック
= 300人の若者がデモンストレーションを行い「古いコテージを利用してユース・センターを作る要求」 ~ 市はすぐに検討し行動する(局長が討論に参加)
○市のポリシー:「さまざまな活動を支援し、批判があれば受け入れる」
→デンマークでは警察に通報し、警察権力を使ってデモを暴力的に排除しようとしてさらに若者の暴動が激化した
~ ヘルシンキ市青年局はネゴシエイトの機能を担う
3. 文化的市民活動の強化(Enhancing cultural citizenships)
EX:若者の文化活動(ストリート・ダンス)の支援、ダンス・アクション(路上のダンスイベント)の支援、モーター・スポーツ(カートなど)の支援
4. インターネットを利用した若者支援(Youth work in the net)
EX:ⅰ)(市の?)サイトにバーチャルなホテルをつくり、アバターを通して80%の中学生がアクセスしている
ⅱ)国からの支援を受けてネット上のユース・ワークを展開
ⅲ)国と市の将来にわたる協力関係の基礎
5. リスクを抱える若者支援(Empowering youth at risk)
= ユース・ワークを通じた社会的包摂
ⅰ)早期の予防(ユース・センターでのプログラム展開、社会参加等の民主主義教育など)
ⅱ)目標を設定した介入(ピア教育活動、ワークショップなど)
ⅲ)Reintegration(すでに大きなリスクを抱える若者支援など)
*【質疑】*
Q:Work shopは青年局の活動か?
A:サービスの開発は約10年前でそのときの担当は青年局であったが、現在展開されているほとんど全ては教育局のプログラムである。