2007年度海外調査(フィンランド) [NO.1]
訪問先名称:Nuorisokoti Maininki グループホーム「マイニンキ」
訪問日時:2007年11月24日
*【組織・運営】*
○企業による運営
福祉国家の中で企業が運営している理由は、ヘルシンキ市は70人収容できる施設を持っているが、エスポー市では16人収容できず、もっと小さい街では施設がないし、方法論も持っていない。そのため、そのような自治体では企業に外注することになる。
○ここの会社は、フィンランドに3か所グループホームを持っている。
3か所で23人収容できる。その他にもう一つある施設では、23歳以上で問題を抱えた人々に手に職をつけ、住居を探すことをしている。収容人数は12人。
職員は4つの施設で40人いる。
○グループホームの数
ヘルシンキ市に16か所ある。市の運営しているものは規模が大きい。
ここの設備の水準は標準的なものだが、市の運営している施設はもっと学校的な設備である。フィンランド全体のはっきりした数はわからないが、一軒家でやっているものもあり、それを含めると100はあると思う。
(亀谷補足 エスポー市には2~3件ある。)
国の方針では、施設を少なくして里親にしようとしている。
(亀谷補足 12歳以下は施設には4か月以内しか入れてはいけないことになっている。
里親は預かるだけ(親が要求すれば子どもを返す)。里親制度も難しい面があり、小さい子どもならば問題は少ないが、10歳くらいの子どもで麻薬をやっている子を預かりたいと思う人が少ない。)
*【対象者】*
○17歳まで。8人収容(現在14~16歳、7人)。
今日は家に帰ることができる週末なので、2人だけいる。今現在寝ているところである。
○ここにいる子は、麻薬の問題・親の暴力・不登校・精神的不安定などを抱えている。
「解決できるよ」と話を聞いてあげて、話しあうことをしている。環境を変えてあげることが大事である。親や悪い友達が来てしまわないこと、「施設に行く」のではなく、家を変えることが重要である。
○グループホームにはどういう人が来るか、誰が判断するか?
来るのはごく一部であり、最終手段である。多くは通所する施設で対応するが、それらをやってどうしようもない子どもがここに来る。
学校の先生やソーシャルワーカーが、地域のソーシャルワーカーに連絡をとってここに来ることになる。
○麻薬とか刑事事件は?
麻薬は、友だちに勧められてちょっとやってしまったという程度の子どもがここに来る。麻薬中毒までいくとソーシャルワーカーや警察が対応することになる。17歳までは未然に防ぎ、18歳になったら自分で何とかするという考え方である。
○半径200㌔の地域から来ている。ヴァンター市から来ているのは1人だけ。
*【施設設備】*
○子どもたちの部屋
16歳男子、14歳女子の部屋
テレビ、インターネットは相談のうえ利用する。宿題をやっていればゲームをすることも可。
大事にしているのは、規則でがんじがらめにするのではなく、家のようにすること。起こすのもたたき起こすのではなく、「お腹すかないの?」と声をかけるようにしている。
平日は学校に行かせて、宿題をやらせるが、休日はノータッチである。
24時間ドアをオープンにしている。夜中に外出することもできる。もちろん、その場合は、次の日に話し合いをするが、自由を与えて信頼をつくるが重要である。
子どもの趣味を尊重している。学校は近くに転校させる。ついていけないときには家庭教師もつける。だいたい13歳から受け入れる。両親の問題が解決しても、本人がここの留まりたいと思えば、18歳までいることができる。その後、ここを出て一人暮らしを始めた後も、21歳までは世話をすることになっている。
しつこいくらいコンタクトをとるようにしており、「あなたのことを考えているよ」と伝えている。
親とも密接に連絡を取っている。子どもたちは、家よりも居心地がいいと言う。家は大変な問題を抱えていることが多い。会いに来たければ毎日来ることもできるが、会いに来ない人もいる。ソーシャルワーカーと協力して、少なくとも年に4回は来てもらうことにしている。ここまで人が一緒に居てくれる経験がないので、抜け出したりせずいい子にしている。
○プレイルーム、セラピールーム
小さい年齢の子どもと異なりスキンシップをとりにくいので、散髪したり、マッサージしたりすることで抵抗なくスキンシップをとるようにしている。
女性スタッフの1人は、精神科の看護師。マッサージと言いながら、マッサージというよりは、全身をリラックスさせるようにしている。
○サウナ、ランドリー、相談室
洗濯、掃除は自分で行う。1か月10ユーロの消耗品代が出るので、それでシャンプー等を買っている。(cf.行政が運営するグループホームではない)
*【2人の女の子 15歳と17歳。】*
・ここに1年いる。タンペレから引っ越してきた。
この施設にいて満足なのは、自由を尊重してもらっていること。不満なことは、職員は口を慎んでほしいこと。職員は厳しい。新しい学校でも満足している。でも昔住んでいたところが恋しい。いつかは戻りたい。
*【スタッフ】*
ここには職員が9人おり、看護師か福祉員(福祉育成職員、AMKの福祉を卒業。修士が必要なソーシャルワーカーとは違う)である。
○三交代制をとっているか?(日本の養護施設は待遇が悪いので職員の平均年齢が23歳)
・女性スタッフ 三交代制である。日本の状況にびっくりしている。95年に学士をとってからこの仕事続けているが待遇に満足している。でも施設によっては環境が厳しく、荒れ放題になっているところもある。
・男性スタッフ 三交代制はリズムが難しい。家にいるように仕事をする難しさ、プライベートと分ける難しさがある。しかし、基本の規則以外は自由に仕事することができる。
○就職指導・進路指導
学歴社会になっているので、なるべく学校に行かせるようにしている。ここから直接就職することはない。職業学校に行っている子が多い。問題も多いので、学校に行くのに時間がかかったり、やめたり、仕事に就いてもやめてしまったりということが多い。18歳を越えて職業学校に行っていることが多い。
*【予算】*
私たちは、この施設を経営している。フィンランドで14000人の若者がこういうところへ入らないといけない。
親がお金を支払う必要はなく、国からの補助金で運営されている。子どもの住んだ日数割りで支払われる。子どもは市から送られてくる。
子ども1人あたり1年106000ユーロをタンペレ市が支出している。こんな高い金額に驚くかもしれないが、麻薬中毒になった場合、1人当たり1日750ユーロかかることになる。
市がやっているものよりも補助金が高い。それは、建物代、職員の費用があるからだが、最終的に使える金額は変わらない。今、10~12歳の子どもの施設はない。
○親に経済的余裕があってもお金を払わなくていいのか?
17歳まで育児手当が、1か月1人100ユーロくらい支払われるが、それが両親ではなくこの施設に支払われることになる。非常に裕福な家庭の場合、300~400ユーロを国や市に支払うことになっているが、実際にそういうことはない。
手当にも課税される。それゆえ、税金はうまく回っていく。
○18~21歳までの費用は?
18歳以降は、1週間に2回面談をする。月に10時間。これについては国が補助することになっている。国の法律で、21歳までは支援しないといけないと決められている。
大人として認められるので、個人の失業手当や住居手当がある。