2010年10月22日金曜日

NATIONAL WORKSHOP ASSOCIATION

2007年度海外調査(フィンランド) [NO.4]  



訪問先名称:
NATIONAL WORKSHOP ASSOCIATION(Valtakunnallinen Työpajayhdistys)
「全国ワークショップ協会」
訪問日時:2007年11月22日


*【「全国ワークショップ協会」の設立経緯】*
・「全国ワークショップ協会」は、1997年にワークショップの専門職によって設立された。
・非営利組織である「全国ワークショップ協会」は、ワークショップ活動の発展、スタッフの技術向上、情報提供などのサービスを担い、メンバー組織および関連団体のための社会的雇用social employmentを生み出している。2010年にむけて、さらなる全国組織の展開を進めている。現在、①将来を見据え、②行政と民間におけるパートナーシップを刷新して、③信頼性を構築することを、協会の理念としている。
・「全国ワークショップ協会」が行っている具体的な業務として、地域ネットワークの推進、広報誌作成、ホームページ作成、テーマ別セミナー開催、全国集会開催がある。


*【「全国ワークショップ協会」の組織運営】*
・2007年現在、163団体が加盟して、10人のスタッフが働いている。スタッフは全国組織のなかから選ばれ、組織のトップは国会議員である。
・基本資金は「教育省青年局」から支出されている。そのほかの財源として、ヨーロッパ社会基金European Social Fund、教会、厚生省、メンバー組織からの会費、教育サービスの対価がある。
・多くのプロジェクトは、ヨーロッパ社会基金によって運営されてきた。だが、近年、ヨーロッパ社会基金からの資金調達が難しくなっている。資金がなくなると、自治体によっては活動をやめてしまうところもある。フィンランドは、1995年からEUメンバーになっている。ワークショップの運営資金は、ほとんど1年ごとに更新されるため、とても不安定だといえる。
・「全国ワークショップ協会」のパートナーとして、労働省、厚生省、教育省、自治体、労働組合、NGOなどがある。
・現在、全加盟団体のうち、70%は自治体が運営して、30%は財団・民間会社・民間団体などが運営している。


*【ワークショップの設立経緯】*
・ワークショップ、二つの法律に依拠して設置されている。第一に、「青年法Youth Act」(2006年)で、必要に応じてワークショップを設置する旨が記載されている。第二に、「労働法」で、ワークショップに関する記載がある。
・現在、ワークショップは常設機関ではないが、いずれは常設機関にしたいと考えている。現政府はワークショップの設立を定めている。だが、財源が非常に多元的で、常設化が難しい。
・1980年代から、ワークショップが開始された。ワークショップの進展については、以下の5段階に整理できる。
「1983~1990年」……発展
ユースワークショップ活動が始まる。職業訓練の要素は弱い。徒弟制度に入れない若者?
「1990年~1995年」……拡大
ワークショップ数が増える。大不況の時期。失業率の増大。
「1995~1997/98年」……内容の広がり
ヨーロッパ社会基金から資金を得る。
「1997/98~2000年」……内容の発展
「2000年~」……プロフェッショナル化


*【ワークショップの現状】*
・ワークショップの目的は、仕事をしながら、個人の日常生活の自己管理を促し、教育や就労への参入を助けることにある。ワークショップは、社会的雇用を発展させてきた。それは、いわば中間的労働市場とでも呼べるものである。ワークショップは、一つの自立した「社会」を構成しているといえる。
・現在、ワークショップは200箇所存在する。ワークショップは「成人対象」と「若者対象(29歳以下)」に分かれ、2007年の参加者は12000人に上る。そのうち、若者は8000人を占める。


*【ワークショップの仕組み】*
・ワークショップは大きく①個人訓練、②職業訓練に分けることができる。個人訓練は、日常生活の管理、酒の管理、健康管理、訪問活動、個人の将来計画、日記、IT教育などからなる。また、職業訓練は、モチベーション維持、指導、参加、指示、徒弟制度あるいは企業実習からなる。
・ワークショップは、マラソンのように、次の段階に整理することができる。
「スタート段階」……日常生活への適応
「リハビリ訓練段階」……個人訓練
「職業準備訓練段階」……職業訓練
「職場につながる雇用」……実際の雇用
・職業生活に慣れることの意味は、社会適応にある。つまり、職業そのものを目的にするのではなく、社会適応のための道具として用いる。そうした指針に基づき、徐々に個人訓練を減らして、職業訓練を増やしていく。個人訓練の段階では、社会的な支えが必要である。その段階を超えたら、職業訓練が必要になる。職業訓練の段階になると、教師は同僚(相談できる仲間)の役割を果たすことになる。
・個人トレーナーが、すべてのワークショップにいるわけではない。ユースワーカーやソーシャルワーカーがつねに必要だというわけではない。


*【ワークショップのプログラムには、次のようなものがある。】*
木工(woodoo)
金属
コンピューター
服飾
メディア・IT関連
アート・文化活動
リサイクル


*【ワークショップに参加する若者】*
・ワークショップに参加する若者には、次のような者である。
何もしていない
仕事経験がない者
勉強を中断した者
稼得能力のない者
失業者
アルコール中毒者、精神疾患
障害者、病人
移民

・リスクを抱えた若者が7~10%は存在しており、ワークショップは必要である。おおよそ、リスクを抱えた若者は4500~6000人/年である。そのうち、「職業学校アンマッティコウル」を中退する者の割合は50%となっている。30%は別の「職業学校」に移行し、20%は完全にやめてしまう。
・マージナル化した若者は、失業、低所得、住宅、学校からのドロップアウト、アルコール、精神疾患など、多くの問題を抱えている。対応するためには、各機関の協力が必要である。だが、個人情報の管理が厳しく、なかなか統合したサービスを提供することができない。
・マージナル化の背景には、教育による選別効果、職業生活の激化、構造的失業もある。
・若者は何もしないで、給付金で暮らす場合もある。ワークショップに参加しているときとニート状態のときを比べてみると、費用は「ワークショップ」1€、「ニート状態」70¢とほとんど差がない。したがって、社会参加という視点から見れば、ワークショップのほうが有意味だと考えられる。ただ、このあたりのコストははっきりしないことも多い。なぜなら、省庁による分断が激しく、コストの全体像がつかめないからだ。
・ワークショップで働くと、822€/月+αもらえる。ただし、その期間は10ヶ月となっている。そのほか、失業手当514€/月(18ヶ月まで)、何もしていないとき(生活保護)389€となっている。さらに、住宅手当も存在する。社会保障制度は非常に複雑になっている。
・ワークショップにいたる経路としては、学校をやめる→ハローワークから誘導→ワークショップが多い。
・ワークショップ終了後の進路としては、70%は進学あるいは職場への移行である。そのうち、一部には徴兵や妊娠も含まれる。ただ、30%は再び戻ってくる。
・ワークショップと学校の連携が不可欠である。しかしながら、現状では、「職業学校」や中学校の子どもがワークショップで教育を受ける事例はあまり多くない。ただ、「Woodoo」では、ワークショップに来て、学校の単位を取得するシステムを考えている。
・ワークショップには、インターンシップ制度もあって、実際の活動を通じて学習する。
・毎年5000人の外国人がヘルシンキにやってくる。そのうち、毎年500人が学校に行かない状況になる。そうした外国人を段階的に学校に適応させることも、ワークショップの役割の一つである。


*【フィンランドの若者の一般的状況】*
・現在、25歳以下の公式に登録されている失業者は19234人である。そのうち約40%の7700人は、基礎教育証明書しか持たない。
・現在、何らかの給付をもらっている者は52000人。それに対して、給付を受給していない者(現在の地位が不明な者)は43000人に上る。
・現在、フィンランドの全体失業率は7%以下で、低い値となっている。若年失業率は16%である。
・フィンランドの生活保護受給者のなかで、20~29歳の若者のしめる値が一番大きい。
・教育省によれば、基礎学校(16歳)の平均点数が6以下の者が16%に達する。それは職業学校への入学が難しい、あるいは入学してもついていくのが難しいレベル。成績は、「4=悪い」から「10=良い」のあいだでつけられる。
現在、都市部では、家賃が高く一人暮らしが難しい。