2010年10月22日金曜日

Birmingham City Council Youth Service

2007年度海外調査(イギリス) [NO.4]     


訪問先名称:バーミンガム市学校教育・変形教育部ユースサービス担当
Birmingham City Council Youth Service
訪問日時:2007年11月29日


*【ヒヤリングの骨子】

Every Child MattersやChildren’s Act、あるいはYouth Matters以降の子ども・若者行政の再編成をバーミンガム市では、どうとらえているか?ポジティブに評価する面、ネガティブに評価する面。(政策理念に関して、実際の運用や予算などの条件整備面に関して)

こうした一連の動向以前に、バーミンガム市が手がけてきた子ども・若者行政の特徴・特色はどのようなものか、またとりわけパートナーシップ型政策・行政の経過や蓄積について。バーミンガムはパートナーシップ型行政運営の先駆けと言われていると思うが、なぜそれが可能であったと考えるか?

市で作成したThe Children and Young People's Plan2006-2009に関して ここまでの蓄積にたって、今は何をとりわけ重視しようとしているか? またどのような点が今後の子ども・若者行政の実施において難しい課題だと認識しているか?



*【子ども・若者・家族局は5つのセクションから構成されている】

1.transforming Education, 2.inclusion Services 3.specialist service 4.strategy & commissioning 5.Business support

ユースワークは、もともと教会の活動から出たもの。1960年以後ユースワークが仕事として確立してきた。現在は大学卒業の資格をもつユースワーカーができた。

・ユースサービスは4つの目標(Youth Mattersで提示)を達成しなければならない。
「10年計画 the National Service Framework for Children, Young People and Maternity Service, 10 years programme to stimulate long-term and sustained improvement in children’s health」
政府が出した初めてのもの。妊娠から大人になるまでの公正で高い質と統合された保健・社会的ケアを強化する、子ども・若者・妊産婦の保健・社会サービスの標準を確立するもの。


*【1.ユースサービスは、ユニバーサルサービスである】

問題がある若者だけの対策ではなく、若い人一般の政策である。
若者のための場所(プログラムを実施している場所)は、安全に楽しく皆で一緒に過ごせる所であり、そこにいる大人は資格を持っている。若者に何をどのようにサポートするかを理解している人がそこにいるということ。若い人なら誰でも行ける。問題を持っている人でなければいけないということではない。
これが、とくにコネクションが中心にやるようなサービスである。義務教育が終わった先のことをサポートするサービスである。

*【2.情報、助言、ガイダンス】

この中の一つがキャリアサービスである。
情報サービス:インフォメーションショップ(学校教育の外にあるいろいろな問題についての様々な情報提供)市内に5ヶ所ある。

*【3.コミュニティに積極的に参加する】

 全国に100万の機会を作ろうという計画
自分が役に立っている、コミュニティの中に役割があると若者は責任をもって仕事をしようという気持ちになる。




*【質疑】

Q.宮本:フィンランドでも若者の参加への取り組みが積極的に行われていたがイギリスでもそうか?
A.・だいたい北ヨーロッパではそういうことがかなり広く行われているのではないか。
・これの一番いいところは、今まで過去20年間くらい若者政策というと、若者対策をどうするか、若者の犯罪であるとか、そういったことをどういうふうにするかということだけが政策の対象だったのが、この政策はそういうのではなく、健全な若者にさらに機会を与える、そういうところを見ているところが非常にいい。問題がある若者を引き上げるとか、問題があるから対策をとっていくのではなくて、若者であるからそういうことがあって当然だという気持ちであたることが重要である。

Q.宮本:2007年の提言の長所:ポジティブ・シフトになった理由は何ですか?
A.・過去20年間は、若者対策だったが、ポジティブ・シフトになった。それは、今の大臣が非常に楽観的であるという個人的な性格、その人の個人的理念によるものではないか。それがかなり大きく影響しているのだろう。
・学問的な調査結果でも、全体を上げれば、問題グループも底上げされることが明らかにされている。

Q.宮本:例えばシュアスタートとかを見ると、全体をあげるというよりも問題が多い部分を底上げするという印象を受けるが、それとは違うか?
A.・ここは18歳から19歳が対象だから、シュアスタートについてはそちらの方が良く知っているだろう。

Q.ポジティブ・シフトというのは、シュアスタートなどとは違う独立した傾向なのでしょうか?10代ですね?
A.・ユースサービスは13から19歳なので、そこをみる傾向がある。0歳とか5歳ということについてはあまり関与していない。
・シュアスタートは、子どもの保護から出てきている。保護というのは問題があるから保護するのであり、そういうかたちでネガティブな方面が見やすいのではないか。子どもの福祉全体というと悲劇的な事件をきっかけにしたということがあるので、ネガティブなところを治そうという風に見えがちである。
10代になると、積極的に可能性を高めるという方向にある。



*【4.困難な問題を抱えた若者を対象にする】

複合的な問題をもった若者を対象としている。
複合的な問題のある若い人というのは、解決のためにはたとえば14ヶ所くらい行かないと改善されない。しかし、これまでは横のつながりが全くなかった。

〈統合的な若者サービス(IYS)〉
サービスは統合的に行われなければならない。
実際にどういう組み合わせで、どのようにやるかは各地方に任されている。
各地方でいろんなやりかたがでてきている
一般的な例:ユースサービス、コネクションズ、犯罪防止関係、10代の妊娠、麻薬関係などの機関が集まる傾向がある。

諸機関の統合は、言うのは簡単だが実際には問題がある。
1.情報の共有、2.訓練の共同実施、3.会員で頻繁に会合をもつ

・目指すべき方向はみんな理解している。問題は、どうやってやるか、何をやるかである。ごちゃごちゃ言わず、とにかく成果が現われるようにすることが大切である。また、何をやるかではなく、どうやってやるかだ。
・今後、ユースサービス向け予算が、青少年のその他のものへと移動することもある。既得権はきかない。その一つの傾向として、政府のお金が地方当局に来る場合、細かく分かれずまとまってくる。使い方は地方が決める。人口サイズに応じて、ラベルをつけないで国からまとめてくるのである。
この隣の建物は中央政府の支所で、そこからお金がくる。学校関係に関しては配分が決まっている。しかし徐々にその傾向を緩めていくといわれている。「追加達成目標」といって、超困難な課題を達成したらより自由に予算を使ってよい。
・政府は徐々にお金の決まりを緩めていく方向にある。そうすると言っている。
・ユースサービスは、法的に絶対やらなければいけないという法令はないので、お金を出さなくてもよいと理屈的にはいえる。非常に有効なユースサービスなら、若者一人につき一年に120ポンドを使ってよいとされている。現在バーミンガムは60ポンドくらい使っている。

・今までユースサービスは法律がなかったが、今回初めて法律でユースサービスを位置づけ、地方当局は若者にさきほどあげた4つのことを提供しなければいけないという法律になっている。
・ユースサービスの法的義務化とは?
25%の若者に接触しなければならない。若者がこちらを一目見て「いや」と言ってもそれは構わない。ここは27%に達した。




*【質疑】

Q.宮本:27%というのは調査で把握しているのか?
A.・若者の27%がまず機関に来る。その次の目標として、その中の60%が実際にそこの活動を利用するようにならなければいけない。

・最初の27%が、その後何回も来るようだと、その時点で書類を渡して、名前、住所、民族などを書いてもらい、それを記録に載せる。最初は若者が書いてくれるか心配だったが、結構何の困難もなくやってくれる。

・データは、各地のユースセンターごとにまとめて、中央にまとまる。

・最初やったときはユースワーカーの反対があった。そういうことはユースワークがすることではないという反対だった。最初はそういうことを聞き出すと若い人が来なくなるかもしれないという心配があったが、そういうことはなく若い人は来てくれた。

・そういうことをすると、お金をもらうための証拠になる。統計的に説明できるので結果的には皆非常に喜んでいる。

・年に1回は中央政府に集めた統計を報告する。それによって中央のデータベースができる。中央のデータベースとは、ユースサービスの関係のデータベースである。

・統合政策のなかで、各自がそれぞれやっていることを、どうやってまとめるかということが問題となっている。この用紙は去年の結果である。何人職員がいるとか・・・1年に一度・・・全国比較である。
情報の取り扱いとか統計の取り方が非常に洗練されてきて、それを大いに使っている。

Q.宮本:非常にいいことだけれども、統計を取るために非常に多くのエネルギーを使っているのでは?
A.・最初の投資は非常に大きかった。各ユースセンターにコンピューターを入れて、その専門職員を雇う。そういうことで準備にお金がかかったけれども、それについては中央政府からお金が出た。

・一番重要な変化というのは関係者の職員の中の意識の変化である。こういうことが重要であるということを皆意識してきた。

・議論のやり方として、例えば学校の教師でとか、医者とかの職業は記録が全部ある。ところがユースサービスはそういうことがなかった。医者・教師・弁護士の仕事と同等の仕事としてみてもらうために、こっちもそれなりの記録をとっておくべきだ、そういうことを利用するべきだということが議論された。

・ユースサービスで働く人は、最初は面倒なことを言う人がいるけれども、ちゃんと説明して、子どものためになるということを説明すれば、なんだかんだ言わずに非常に熱心に働く。とくにここに来る人たちというのはお金を目当てにする人はいない。初め反対する人もいるが、いかに子どものためになるかということを筋道立てて説明すれば非常に良く働くし、変化に非常に柔軟に対応する。

・特に問題がある若者に関しては、このデータを関係各当局の人たちが共有できるようにする。今までユースサービス関係は政府に対して非所に批判的だった。これに関しては非常にいい方向に進んでいると思う。

Q.宮本:数値で出すというのは大変重要なことだが、場所によって困難なところとか楽なところとか当然あると思う。そこのところはどう勘案するのか?
A.・全市合わた数字でものをいうから、ちゃんと合う。

Q.宮本:評価のポイントは?
A.・利用する若者の数で評価するということはない。年に1回、年の初めに、各ユースセンター、ユースクラブはそこの達成目標を提出する。その目標に達したか、達してないかが評価のポイント。
だから、それぞれが現実に添った目標をたてて、それにむかって活動する

・ユニットプラン(達成目標)を各地区ごとに立てて、それを合わせた形でバーミンガムの達成目標というのを作る。それに基づいて市のユースサービスの活動プランというものを立てて、年の終わりにそれを検討して、どのくらい達成したか、何が達成できなかったかを検討する。

・下から積み上げて活動計画ができるが、達成目標はすべてあの5つの達成目標につながっていく。

・例えば今日どのユースセンターに行っても、ユースワーカーは、なぜやっているのか、5つの目標にどう結びついているかということを説明できるはずだ、理屈では。そこのリーダーはその背景としてなぜそういうものが出てきたかということもすべて説明できるはずだ。

・ちゃんとした計画があっても、何事かが起こると柔軟に変化していかなければいけない。

・もともとは、ユースワークというものは計画等立てるべきではない、若い人がそこに来てやりたいといったらやるものだ、それがユースワークだったのだけれども、それでは現実的な結果がでない、成果があまり出ない。

・今、計画を立てて、達成目標を立て、それがわかって活動するというふうになっている。ただ、ユースワークサービスは若者自身の意志でやるものだから、こっちで計画を立てても向こうが来なければ仕方ない。来てもこっちと全く違うことをやりたがる、そこは常に柔軟に対応している。

・そういう意味でここのスタッフは非常に技術が必要だ。常に若者の心を捉えていなければいけない。

Q.宮本:この3日間ユースワークの現場を見せてもらいましたが、若者の心を捉えながらやっているユースワーカーがいることに非常に感銘を受けました。
A.・それほどうまくいってないところもあることはあるけれども、全体としてはうまくいっている。

・10年計画の中に、社会全体として若者は問題であるという見方をやめなければいけない、ということも入っている。

・先日結婚式に招待されたが、子どもはつれてこないで下さいと書いてあった。子どもを入れないというのはわりと多くあることで、この国では珍しいことではない。若者というのは問題であるという雰囲気は非常に強い。

Q.宮本:今回私たちがフィンランドとイギリスと両方見て、ユースワークというものがきちんとある社会だと思いました。日本の場合にはその歴史がない。そこが大きな違いと思います。
A.・アメリカにもユースワークという形はない。

・児童保護に関して、アメリカやヨーロッパに比べてイギリスの法律は非常に厳しい。

・ユースワークのエッセンスというのは、理由抜きで若者と付き合う。理由なき付き合い。他の若者に関係ある仕事の場合は何かしら訳があって付き合う。ユースサービスは若者がいやだといえばそうだと認める。一切が若者の意志による。それがユースサービスのエッセンスである。

・一人のユースワーカーが1週間のうちに子どもを裁判所に連れて行かなければいけないとか、休みの計画を立てるとか、試験の成績が悪かった子を慰めるとか家庭の相談を受けるとか非常に幅広いことを何でもやっている。若者の生活の何事も批判したり批評したりしないで、大人がサポートするのがユースサービスだ。

・ユースワーカーというのは行けば必ずいる、まずそれが非常に重要なことである。

・批判したり反対したりしないとは言っても、基準ははっきり作る。「こういうことは社会的に受け入れられないのでここでは受けられない」という基準。境界線ははっきりしている。外の大人に罵詈雑言を浴びせるとか暴力を働くようなものは受けられないということをはっきりさせて、そういうことをする子は入れないのではなく、受け入れていくように活動していく。はっきり初めにわからせることは大切である。誰でも何でも無条件に受け入れているわけではない。

・コネクションというのは悪口が書かれることが良くあるが、実際にいいことはかなりやっている。悪いことは新聞に載りやすい。

Q.宮本:今回、コネクションズとユースワークの両方にヒヤリングをしたが、ユースワークの人たちは、はじめコネクションズに対してかなり批判的だったけれども、5年くらいの間にコネクションズを受け入れるようになっているという印象を持ったが?
A.・コネクションズは悪口を書かれることが多いが、よくやっているところもある。5年間でユースワークがコネクションズを受け入れるようになっている。
ここで資格を取った9人のユースワーカーが、コネクションズに出向して働いている。あるコネクションズ(私たちが訪問したところ)の7人の中の1人がここのメンバーで、パーソナルアドバイザーとして働いている。若い人のデータを入力してここによこす。

・現在は各機関が異なった地域割をしているため、連携で障害になっている。それは今の問題である。
悲観的に見れば、すでにしっかりと確立した警察であるとかそういうものが、自分たちのやり方を変えるということはまずないだろう。完全に協力することは難しいのではないか。それでも働いている人に真摯な気持ちはある。

■参考URL等
 http://services.bgfl.org/services/youth/default.htm