2010年10月22日金曜日

St. George Careers Development

2008年度3月海外調査(シドニー) [NO.7]


訪問先名称:St. George Careers Development
訪問日時:2008.3.10


<団体の概要と地域性>
St. George Careers Development はHurstvill市の中心部にある。Hurstvill市はシドニーシティーから車で20分程の町、ショッピングモールの直ぐ近くにこの拠点がある。ここでは様々なキャリアに関するプログラムを国の委託を受けて実施している。ユースパスウエイの他、失業者の為のトレーニングプログラムや起業のためのプログラム、資格取得などもできる資格を持っている。
この地区は中国系の富裕層の多い地域であるが、移民の多い地区の為に家族が英語が話せないなどの文化的な問題、また落書き、不登校、アルコール、ドラッグなどの問題も多い、富裕層の多い地区の子供達は両親が働いているためにかぎっ子や学童保育等で親の関わりが少ない家庭が多い。
前回の訪問時に一度訪ねているが、その後のユースパスウエイの運営、実践の状況について、また今回は職業教育制度についての話を伺った。


<オーストラリアでの職業教育制度について>
オーストラリアでは全国職業教育制度ボケーショナルエデュケイション(VET)という制度がある。 1~4の段階がありそれぞれの段階には一般教育での基準と同等の資格が与えられる。(1、2義務教育相当、3高校卒業資格相当、4短大相当?)、この基準は全国共通である。この資格はRTOという認定資格のある学校、または職業訓練機関で取得できる。
認定資格のある学校または職業訓機関から派遣された先生が来て、VEC―1を取得した場合、普通学校の9年生を終えた事となる。またVEC―2を取得する事により普通学校10年生を終了した事となる。オーストラリアでは10年生までが義務教育となる為、その後は高校において普通教育を受けることもできるが、または見習い工などとして更に高い職業資格を取りながら働き、11年生、12年生を終えることもできる。
このような制度ができたのは約12年前だという、それ以前はそれぞれの地方や学校により一貫性のない資格基準を置いており、一部の学校などではディプロマ等の資格が簡単に取れるなどの問題があったが、この制度ができたことで均一になった。また日本と同じように普通教育において脱落する若者が多かった事もあったが、この制度により普通学校を辞めた若者もその後の進路が持ち易くなった。また、普通教育の中での職業教育が定着したのも8年前程からである。この制度により高校卒業資格をとった場合、いくつかの教科においては大学への進学資格も得る事ができる。また、このような資格制度はあくまでも各種の職業適性能力のみを評価するものであるので、学校教育に脱落した若者、もしくは大人であっても段階を踏んで職業資格を取る事ができ、それが国の基準にしたがった義務教育、高等教育の資格として評価される。



<具体的な資格取得のためのプログラム>
*T-Vet(学校に行かなくても卒業資格が取れる制度)3日間学校、2日間職業訓練等
*トレイニーシップ制度(1年間)(主にビジネス、小売、接客等)
週のうち半日はTAFEにて座学学習、他は現場にて仕事をすることにより職業訓練資格3が取得できる。
*アプレンティスシップ制度(4年間)(主に職人、メカニック、シェフ等)義務教育の10年生を終えている事が条件。仕事が中心になり、週1回のセミナーを受講する。









<ユースパスウエイでの実践について>
対象:13歳~19歳で学校に行っている、または学校を辞めて12ヶ月以内の人
目的:1)予防、防止、なるべく早く学校教育の中に入れておくことを目標にしている。2)何らかの形での職業教育、3)仕事の支援 を目的として活動している。

ユースパスウエイに来た若者をどのように支援するのか?
1)個人がどんな問題を持っているのかを明確にする
2)どのようなバリアがあるか 15つのバリアを参照する。
3)どんなバリアがあるかを話し合って、本人と契約をする。
EX:学校に不満足、読み書きができない、など 同意すれば、TAFEで勉強等。
4)基本的な問題 小グループ、カウンセリング、
EX:不登校・・・なぜ、不登校? 精神疾患、自己尊重心がない、仕事につながらない。
5)対処できないほかの分野 
EX:家族の問題、兄弟の面倒を見なくてはならない・・・→他の可能性も検討
6)グループ分けする(同じ共通点を持った人をグループ分けして、活動する事も有効)
EX:ライフスキルについて コミュニケーションスキル等どういうキャリアに興味があるかというテスト、履歴書が書けるようなセミナー、チームで何かするという事を学ぶ、自己尊重心を学ぶなど。勉強の仕方、図書館の利用の仕方を教えるなど・・・。

【具体的なあるクライアントについての事例を紹介】
15歳以下 非常にリスクを抱えた子供 
*スクールカウンセラーから 13、4歳で学校嫌い、授業に出ないなどの落ちこぼれの子がいると依頼を受ける。
カウンセラーはTAFEに行くように勧めたが、TAFEにいける年齢でなかった。
本人は行き場がなく、誰に相談してよいかわからなかった。
→この子のニーズ、目標が何かという支援プランを作るのにユースパスウエイを使った。
*基本的には学校に戻す事を目的としてプランを立てた。
*このプログラムを実施する為に学校に行かなくても良い日を作る週半日つくってもらった。(学校に行っていても問題行動なら、こちらに来たほうが良い。)
*最初は準備期間12週間・・どういうことをしたらいいかを見る。アクティビティー等をする。 *第二段階・・12週間 BBQ台を作る等 自信、達成感を作る 何かを建設的に物を作る。
*第三段階・・自信をつけて学校に戻す。
*グループで行動 +個人の必要に応じたカウンセリング、支援も行う。




*15のバリアについても同時に対処する

このような事例がいくつもあり、実績ができるに伴い学校との関係性はだんだんとできてきたという。しかしこの国でも実際は学校との連携は非常に難しく、この団体のようなNPO等の努力により学校との信頼構築がゆっくりと進んでいるようだった。
学校との連携に必要なのは学校にこまめに通い、先生の仕事をとるではなく、アドバイスをするのだという姿勢で望む事だという。
また、スクールカウンセラーについては一人当たりの仕事が多く、一人で2、3校を兼任している為に地域コミュニティーとの連携ができていない、その点でこのようなNPO団体がになう役割は大きいとの事、この点についても日本と共通点であると思う。
学校にはスクールカウンセラー、進路指導員(キャリアアドバイザー)福祉チーム(ウエルフェアチーム)(主に学年主任などが入っている。)が連携して子供達の支援に取り組んでいるが、この団体では主に福祉チームにアドバイザーとして参加し、活動を行っている。


■参考URL  
http://www.sgcdc.com.au/

■参考資料
Youth Pathways Initial Transition Plan