2010年10月22日金曜日

Positive Steps(Acocks Green Detached Project)

2007年度海外調査(イギリス) [NO.8]      


訪問先名称:Positive Steps(Acocks Green Detached Project)
訪問日時:2007年11月26日
場所:Bierton Community Centre

*【オフィスにて】*
Bierton Community Centreという、広い敷地に立っている平屋建ての建物のなかにこのユースプロジェクトの拠点がある。室内はポスターやらが賑やかに貼られていて、雑然とした雰囲気。いかにも「たまり場」という感じ。掲示物の中に地図のようなものがある。それが彼らデタッチドユースワーカーが出かけていくエリア図とのこと。赤い線でくくられている内部が彼らのエリア、そのなかで青いピンが付いているのが既にコンタクトのある若者グループ、黒いピンはそこに若者グループがいるのはわかっているが、まだコンタクトが付いていないグループ。
彼らは、多くは夕方に、いつも3人組で出かけていく。そしてたむろしている若者たちを見つけて声をかける。スケートボードをもって遊んでいるグループの場合は、居場所自体が動いても行く。コンタクトが取れて、さらに人間的接触ができるようになるのには数ヶ月かかることもあるという。関わり方は、若者たちが好きなこと、彼らの関心事に依拠しながら麻薬教育や性教育をプロジェクト化していったりする。彼らの声かけに関心をもつグループもあれば、もたないグループもある。対象とするのは12歳から19歳ぐらい。
ここに来れば自分が関心もっていることをやれるよ、ということで呼びかけて、その後ここに来て何か活動するなかで、自尊感情を育てていき、次に何かする気持ちになるのを助ける活動といえる。ただ家庭に問題があり、例えば虐待があったりしたら、当人の意思に関わりなくソーシャルワーカーに連絡を取ったりもする。チームワークが非常に重要な仕事で、自分たちも互いに良く助け合う。
このプロジェクトの発足経緯は、墓地のVandalism(破壊行為)が問題になっており、それをどうにかしようとした市当局がプロジェクト募集したことに発する。そこに集まってきた多様なバックグラウンドをもつ人たち(看護士、麻薬関係、ユースワーカーなど)が、このチームを結成した。ここには7人のワーカー(フルタイム2人、パートタイム5人 他にボランティア)がいて、もう一つワークショップがある? 近いうちに地域内にもユースセンターができる予定、でもそこが彼らの拠点にはならない。活動の資金面では、Youth Oppotunity FundとYouth Capital Fundなどに申請して、受けてきた。

*【コネクションズとの関連】*
コネクションズとは適宜情報交換をおこなっている。コネクションズは初め、キャリアサービスのようだったが、それでは仕事にならないことがわかってきて、PAがユースワークを学ぶようになってきた。初めは予算面での反発意識(ユースワークが予算不足でピーーピー言っているのに、コネクションズは莫大な予算をもってやってきたので)もあったが、組織面で統合されるようになってくるなかで、それも取り除かれてきたと思う。こういう場は若者たちが自主的にも来るが、コネクションズは自主的には来る場ではないので、それで軋轢があったこともある。ただ、デタッチドユースワークは来ない若者たちにアプローチする活動だが。

*【活動場所にて】*
こうした話をオフィス(?)でうかがったあと、活動の場となる部屋に案内してくれた。飲食やスヌーカーができるクラブ風の部屋と、音楽などの録音編集ができる小部屋がある。ここでも自分たちがやりたいことができるんだよと誘って、連れてくることで、危険なファクターがたくさんある街の文化から彼らを切り離し、彼らのやりたいことをもう少し別の形で育てていくことが彼らの仕事。使いたい人は基本的に自由にカギを開けて使うことができるという。でも中で暴力をふるうなどこの場のルールを犯したら、立ち入りできなくなることもある。小部屋に案内してくれたChrisとPaulは、ここでは自分たちがやりたいことが自分たち自身でできることが非常に楽しいと言っていた。Chrisはバンドの楽器を購入するために自分が責任者となってYouth Opportunity Fundを申請して、取得したのだそうで、大きな方の部屋にはそのドラムがあった。Chrisは今は19歳だが、13歳からここの常連?だったそうで、まさに「Positive Step」っ子という感じ。街でぶらぶらしている連中を見かけると、「ここに来いよ、やりたいことができるぜ」といってこの場の宣伝をして回っているのだという。あとでPatに聞いた話では、3人組で歩き回るとき、Chrisらもボランティアワーカーとしてその一員となることがあるという。
つまりこの場には、利用者でもありワーカーでもあるような中間的な立場の若者が何人かいるようだった。彼らは給与は得ていないボランティアだが、Patの話では、ここでのボランティア経験は履歴書に記載できるのだそうで、経験やスキルの獲得とあわせて有利な履歴書記載事項を増やしていくうえでも、その活動は彼ら自身にも寄与するという。ただし彼ら3人は、生育のバックグラウンドに特別な困難はないということだった。

*【スポーツカー組立プロジェクト】*
その後更に、同じ敷地内にある車の修理工場風の建物に案内された。ここが数週間前にBBCで紹介された、車の組立をするユースワークプロジェクトの現場だったところで、仕上がったピカピカのスポーツカーが置いてあった。市販されている組立型の車のキットがあるそうで、それを5000ポンドで買ったのだそうだ。主要にリードしたワーカーはJulesだが彼自身もこの作業の経験や知識があったわけではなく、周囲にさんざんやめておいた方がよいと言われながら、必死にwebで学びつつやったのだという。最初12人の若者が関わり、最後まで続けたのが5人。いずれも長いこと学校に行っていない若者たち。得ていた活動資金はdrug astion関係。最後まで続けたうちの1人はモーターバイクの店で働くようになり、他の1人はカレッジで学ぶようになり、あと1人はまだカレッジに行く年齢になっていないので、ここに残ったという。5人のうち1人は、次のプロジェクトのリーダー的な存在になっているという。
以下はJulesの話。この活動はそのままGCSEの資格には結びついていないが、ここでの経験は雇用者側に高く評価されており、履歴書に書くには非常に有利になっている。また現在行っているモーターバイクの組立プロジェクトは、Open College Networkのクレジットになる。Lifelong Learningの賞も受けた。出来上がった車は、クラシックカーの展示会に何度か出しに行っているとのこと。売ったら1万ポンドになるという。こうした活動には規則もいろいろあり、適当な場所も必要なので、どこででもはできない。この場だからこそできたと思う。
初めキットが来たときには、みな呆然としていて、これでいったい何をやるんだと。みんなにさんざん「できるわけない」と言われながらの作業だったので、やり遂げていく過程で、みな本当に自信をつけた。これまで学校からも見放されてきた若者たちだったので、こうして、努力すれば何とかできるんだという経験をして、また次に何かしてみたいという気持ちをもてるようになったように思う。またワーカー自身も、リスクがあってもやってみるということを学んだと思う。実はJules自身も(彼は30代半ば)、街でたむろしているところを、デタッチド・ユースワーカーから声をかけられた青年だったという。
夕食時のPatとの話。彼女の勤務は月曜日から金曜日までの9時から4時半がschool nurseとしての仕事。月曜日の5時から8時半までがユースワーカーとしての仕事だという、school nurseとしてはNHSに雇用されており、youth workerとしてはCity Councilに雇用されている関係。20年以上school nurseとして働くなかで、徐々にユースワークの仕事に関心をもつようになり、このプロジェクトの公募の祭に応募したのだという。







*【付録】バーミンガム市ユースサービスによるDetached Youth Work(アウトリーチ型ユースワーク)の定義
デタッチドユースワークとは、若者たちと出会える場でならどこででも、彼らと活動するユースワーカーをいう。その仕事は、時に施設型ユースワークが有する縛りから自由で、何らかの理由で他のユースワーク拠点にアクセスできなかったりしなかったりしている若者たちにとって、その柔軟なアプローチは、しばしば理想的な学習の機会となりうる。
デタッチドユースワークは、その仕事が参加する若者たちのペースや納得に依拠して展開していくよう、彼らとの注意深い協議・相談が常に必要とされる。
デタッチドユースワークには、施設・乗り物などから要請される規則がなく、その「権力基盤power base」は特異である。したがって、若者たちはデタッチドユースワーカーとどこまで・どのように関わるかについて、自分たち自身でコントロールすることができる。
若者たちのユースワーカーとの関わりが自主的で話し合いを媒介したものであり続けるように、若者との関係を構築していく。
デタッチド・ユースワーカーは、丹念な事前調査や、若者たちとの討議・相談などを通じて若者たちが必要とするものが何かを見きわめていく。こういうプロセスを経ることで初めて、若者への関与や活動の提供は、予見にもとづくのでなく、本当の意味で彼らが必要とするものに依拠してやっていくことができる。
デタッチド・ユースワーカーは、若者たちの身近にあって、彼らが寄せる問題に対応し、彼らが確かな意思決定をできるよう、明確な情報、アドバイス、サポートを提供する仕事である。


■参考URL
http://www.birmingham.gov.uk/GenerateContent?CONTENT_ITEM_ID=9396CONTENT_ITEM_TYPE=0&MENU_ID=737
http://news.bbc.co.uk/player/nol/newsid_7070000/newsid_7079900/7079994.stm?bw=bb&mp=rm&asb=1&news=1(本プロジェクトによるSports Car Projectを報じるBBC番組’Cash to keep pupils to schools’)
http://www.bbc.co.uk/blogs/nickrobinson/2007/11/05/index.html (上記番組レポーターの解説)
http://news.bbc.co.uk/1/hi/education/7075763.stm (関連BBCニュース)